安全保障とは何か

国家から人間へ

国家安全保障は今や終焉を迎えている.時代の転換点に斬新な視角から未来の安全保障論を説く書き下ろし.

安全保障とは何か
著者 古関 彰一
ジャンル 書籍 > 単行本 > 政治
刊行日 2013/09/26
ISBN 9784000220774
Cコード 0031
体裁 四六 ・ 上製 ・ 254頁
在庫 品切れ
国家安全保障の時代は今や終焉の時を迎えた.新たな脅威の下で,いかなる問題意識が求められているか.本書は二百年前のベンサムの問題提起を紹介し,安全保障論の理念の変遷をたどりつつ,国家安全保障論の形成と衰退を歴史的に相対化する.いま求められる問題意識とは何か.現代の平和と安全を問い続ける渾身の書き下ろし.

■著者からのメッセージ

 著者にとって長い間,安全保障とは謎のような存在でした.学生時代,アンポといえば日米安全保障条約でした.なぜ「基地」と「安全」が結びついているのだろう.こんな単純な疑問を抱いた日からそろそろ半世紀になります.
 糸口が見えたきっかけは,「安全保障」という言葉の多様性を知ったときでした.なかでも北欧の研究者は,かつて平和と安全保障を一体な概念と考えたジェレミー・ベンサムの安全保障論を論じ,「人間の安全保障」は言うまでもなく,societal security(拙訳では「社会的安全保障」としましたが)など非軍事による安全保障を論じています.「国家安全保障」こそが「安全保障」だと考えてきた著者にとってそれは大きな驚きでした.
 この作品は,近代二〇〇年の安全保障の歴史を射程に入れて,理念の変遷を論じています.そもそもベンサムの時代に個人の,しかも自由と人権のために誕生した安全保障は,二〇世紀後半に国家の,しかも軍事中心に変化してしまいました.その国家安全保障(national security)は,いまや人間をさて措いて国家権力と国家組織のための国家安全保障(state security)になってしまいました.
 時代は世界秩序が大きな転換を孕む中で,単なる理想をせつくことなく,期待感をたぎらせながら,安全保障理念の再構築を目指しています.
古関彰一
はじめに――安全保障の再発見
第一章 「安全保障」の系譜
第一節 訳語としての「安全保障」
第二節 「セキュリティ」の多様性
第三節 「安全保障」と「安全」,そして「危険」との間
第四節 近代国家の安全保障
第五節 個人保障から社会保障へ
第六節 二○世紀:激動の始まり
第二章 憲法の最高価値としての安全保障
第一節 自然法論と法実証主義,功利主義
第二節 ベンサムの『永遠平和綱領』
第三節 カントの『永遠平和のために』
第四節 ベンサムにとっての安全保障論としての憲法論
第三章 国家安全保障体制
第一節 国家安全保障への途
第二節 甲殻類国家の誕生――国家安全保障法(NSA)の設置
第三節 戦争形態の変化――国家間紛争から国内紛争へ
第四節 米国の海軍基地――沖縄の「基地」
第五節 民営化される安全保障
第四章 動き始めた新たな安全保障構想
第一節 安全保障構想
第二節 「人間の安全保障」と軍事力
第三節 「社会的安全保障」とは
第四節 新たな脅威の出現――テロの時代
第五節 国連の平和維持活動(PKO)
第五章 今後への展望

引用文献一覧
あとがき
索 引
古関彰一(こせき しょういち)
1943年東京都生まれ.早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了.和光大学教授を経て,1991年より獨協大学法学部教授.専攻=憲政史.日本国憲法の制定過程に関する研究,憲法の平和主義の軌跡を講和条約,安保条約との関わりで解明する仕事をしてきた.この十余年,安全保障に関する提言や歴史的変遷を新たな視角から考察している.主著は『日本国憲法の誕生』(岩波現代文庫),『「平和国家」日本の再検討』(岩波書店,2013年12月に岩波現代文庫として刊行予定),『憲法九条はなぜ制定されたか』(岩波ブックレット),『日本国憲法 平和的共存権への道』(共著,高文研).

書評情報

週刊朝日 2013年12月13日号
東京新聞(朝刊) 2013年11月24日
日本経済新聞(朝刊) 2013年11月17日
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