岩波講座 日本歴史 全22巻 いま、歴史の大きな転換点のなかで
●A5判・上製函入・320頁 ●予定定価3360円(税込)

 日本はいま,これまでにない大きな転換点に立っています.
 新たな歴史をひらくための手がかりは,「歴史を問う」営みの中にしかありません.2013年,岩波書店は日本史学の第一線で活躍する研究者200余名の協力を得て,『岩波講座 日本歴史』の刊行を開始します.

 岩波書店はこれまでも,戦後三次にわたって日本歴史講座を刊行してきました.その刊行年を振り返ると,講座が目指した「歴史を問う」営みが,日本の大きな転換点と重なっていたことに気づきます.
 戦後歴史学がその総力を結集して初めて日本史の全体的構造を提示した第一期『岩波講座 日本歴史』の刊行が開始されたのは,安保闘争の挫折後,高度成長が本格化していた1962年のことでした.高度成長の終焉や沖縄「復帰」などを経て戦後日本のあり方に大きな変化が生じていた1975年に刊行された第二期の『岩波講座 日本歴史』は,そのような状況へ向き合う視座として,民衆史,地域史などが持つ豊かな可能性を提示しました.そして「昭和」の終焉,冷戦構造の崩壊を経た1993年には,自明とされてきた日本という国家の枠組そのものを問い直す歴史像を打ち出した『岩波講座日本通史』が刊行されました.
 それから20年,世界のボーダーレス化がますます進み,アメリカ同時多発テロやそれに続く戦争,中国の台頭などの国際情勢の激動のただなかに日本はあります.一方,国内では政治的混迷が続き,長引く不況の下で経済格差がいよいよ深刻になっています.そして2011年の東日本大震災は,日本が抱える様々な矛盾を一挙に私たちに突きつけました.日本社会のこれからを考え抜く力が今こそ必要とされています.

 混迷する時代のなか,新たな歴史をひらくために──『岩波講座 日本歴史』がその一助となることを願ってやみません.



編集委員


大津 透(おおつ とおる)
1960年生まれ.東京大学教授.
主な著書に『律令国家支配構造の研究』(岩波書店),『道長と宮廷社会』(日本の歴史06,講談社),『日唐律令制の財政構造』(岩波書店),『神話から歴史へ』(天皇の歴史01,講談社).


桜井英治(さくらい えいじ)
1961年生まれ.東京大学准教授.
主な著書に『日本中世の経済構造』(岩波書店),『室町人の精神』(日本の歴史12,講談社),『破産者たちの中世』(日本史リブレット27,山川出版社),『贈与の歴史学』(中公新書).


藤井讓治(ふじい じょうじ)
1947年生まれ.京都大学名誉教授.
主な著書に『江戸幕府老中制形成過程の研究』(校倉書房),『江戸時代の官僚制』(青木書店),『徳川家光』(吉川弘文館),『幕藩領主の権力構造』(岩波書店),『徳川将軍家領知宛行制の研究』(思文閣出版),『天皇と天下人』(天皇の歴史05,講談社),『天下人の時代』(日本近世の歴史1,吉川弘文館).


吉田 裕(よしだ ゆたか)
1954年生まれ.一橋大学教授.
主な著書に『徴兵制』(学習の友社),『現代歴史学と戦争責任』(青木書店),『昭和天皇の終戦史』『日本の軍隊』『アジア・太平洋戦争』(岩波新書),『日本人の戦争観』『兵士たちの戦後史』(岩波書店).『岩波講座 アジア・太平洋戦争』編集委員.


李 成市(り そんし)
1952年生まれ.早稲田大学教授.
主な著書に『東アジアの王権と交易』(青木書店).『古代東アジアの民族と国家』(岩波書店),『東アジア文化圏の形成』(世 界史リブレット,山川出版社),共編著に『古代朝鮮の考古と歴史』(雄山閣),『「韓国併合」100年を問う』(岩波書店).


全巻の構成

第1巻 原始・古代1
第2〜5巻 古代2〜5
第6〜9巻 中世1〜4
第10〜14巻 近世1〜5
第15〜19巻 近現代1〜5
第20巻 テーマ巻1 地域論
第21巻 テーマ巻2 史料論
第22巻 テーマ巻3 歴史学の現在


『日本通史』書影
岩波講座
『岩波講座 日本通史』の刊行(1993‐96)以後の研究の成果・到達点を提示するとともに,全体として大きな歴史の流れがわかるように位置づける.

国民国家論や近代化論,総力戦論などの研究の進展を踏まえ,従来分けられていた「近代」と「現代」を「近現代」として統合し集約的に論じる.

全巻を通して日本史をアジアの中に位置づけることを試みる.

〈時代別〉巻に加え,「地域論」「史料論」「歴史学の現在」という〈テーマ〉巻を設ける.「地域論」では,日本をアジア等の領域にひらく地域,多様な日本をつなぐ地域のあり方から立ち現れる歴史像を提示する.「歴史学の現在」では,時代別巻の歴史叙述がどのような研究上の変遷を踏まえているのか,また現在の研究がどのような問題に直面しているのかを,具体的なトピック(ジェンダー研究,東アジア世界論,社会史…)に即しながら論じる.