C.ダグラス・ラミス

ぼくは、ブラックユーモアで言ったつもりはないんです。本当に造らせないとこの人間たちはわからない、と。
(広瀬隆、2011年9月26日、那覇市パレット市民劇場にて)

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 広瀬隆が『東京に原発を!』を出版したのは、1981年だった。その本は東京でかなりの騒ぎを起こした。ある週刊誌はそこからアイデアを受け、西新宿に原発がある、かなりショッキングな合成写真を表紙にした。本と写真は、東京の大都市エゴイズムを暴露した。広瀬さんは「ここで原発を造ろう」というビラを、新宿駅西口で配った。大都市エゴイストたち――つまり背広を着ているサラリーマン――が立ち止まって叫んだ。「なに言ってるの!? 危ないじゃないか」「そうですか。あなたは原発反対ですか?」「反対なわけないだろう。でも、原発は遠いところに置かないと」「なるほど。東京はその電力をもらって、その危険性は別の人にもらってもらう、ということですね」
 結局原発は(東京から)遠いところに造られた。例えば福島。福島で爆発しメルトダウンした原発は、東京電力のものだということの意義を、まだきちんとつかんでいない人は多いだろう。
 最近沖縄の公の声の主流となった「県外移設」、つまり「ヤマト日本へ、普天間基地を!」という要求は同じようなエゴイズムを暴露している。それに対してヤマト日本人はよく怒るし、政府は問題外にしている。この間米政府は、沖縄にいる米海兵隊の一部の、岩国の米軍基地への移転を日本政府に打診したが、日本政府は1週間ぐらいで断った。なるほど。日本政府は米政府を断れるのだ。理由は、岩国市長が反対したからだそうだ。沖縄県民は16年間続けて普天間基地の県内移設に反対しているが、政府はそれを、米国に断る理由になるとは考えていないようだ。玄葉外務大臣は岩国市長と山口県知事に「安心してください」と言ったそうだ。沖縄の人たちが聞いたことのない言葉だ。
 去年の秋、広瀬さんが講演のために沖縄へ来たとき私は質問した。『東京に原発を!』と「普天間基地県外移設」との違いのひとつとして、前者は風刺だということがあるでしょう、と。彼は「ちがいます」と強く言った。上に書いてあるように、あの本はブラックユーモアではなく、本気だそうだ。それと同じように、「県外移設」も本気だ。沖縄の米軍基地はヤマト日本の政治から生まれたもので、ヤマト日本がその負担をするのは当たり前だろう。同じように、政府が言っているように、原発がどうしても必要であるならば、東京の原発は東京の永田町で造ればいいだろう。
(C.Douglas Lummis・国際政治学者)