森 壮也

どの自然災害被災者もまた当該国の人権法の下で、他の人と同様の人権と自由とを享受すべきであり、差別を受けることがあってはならない。
(IASC自然災害ガイドライン、2006)

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 3.11は、日本のすべての人たちの生活を変えたと言ってもよい。節電は日常茶飯事のことになり、便利さの陰に隠れていたリスクやコストについて改めてわたしたちは目を向けるようになった。あの日、ろう者のわたしは、すぐに家族の安否を確かめようと携帯を手に取り、何度もメールを送ったが、何の返事もなく、不安を抱えたまま、職場を後にして自宅に向かった。ようやく到着した我が家で、ろう者の妻、そして子供たちの姿をわたしは眼にすることができた。けれどもあの日、もう家族に会うことができなくなった人たちが多数いることをわたしたちはその後、知った。そうしたもう再び家族に会えなくなった人たち、その中には、多くの障害者がいた。NHK(Eテレ)「福祉ネットワーク」の被災自治体に対する調査では、総人口に対する死亡率が1.03%であったのに対し、障害者の死亡率は2.06%と2倍の数であったという。
 3.11の2日後、わたしは予定されていたインド出張に出かけた。日本を脱出しようとする人たちで混雑する空港と乱れるダイヤの中でようやく現地に到着したわたしは、彼の地で日本の原発が爆発したというニュースをCNNやBBCで見ることとなった。伝えられるニュースに字幕はなく、簡単な見出しと繰り返し放映される爆発映像。大きな不安と驚きに襲われたが、その後、日本にいても原発事故の情報がしばらく届かなかった障害者たちが多数いたことを知った。
 わたしたちが2011年に経験した地震・津波・原発事故という大きな災害は、緊急時における障害者の置かれている状況をまさに言葉通りわたしたちの眼前に出現せしめた。あの日、障害を持つ人たちにはどれだけの眼が向けられていただろうか。全国紙の無事だった人たちの消息欄ですら、そこに障害者が登場するのには、しばらく時間がかかった。避難・防災計画は障害者も念頭に入れたものになっているだろうか。障害当事者にとっての日常もあの日を境に大きく変わったのだから。
(もり そうや・障害当事者研究者)