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2020.04.08
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2019.09.05
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2017.02.01
電子書籍対応
パスタでたどるイタリア史
アラブの乾燥パスタと新大陸のトマトがイタリアで出会った? イタリア国民食成立の過程でみるイタリア史.
長い歴史と豊かな地域色をもつイタリアで,人々の心を結ぶ国民食パスタ.古代ローマのパスタの原型,アラブ人が伝えた乾燥パスタ,大航海時代がもたらしたトマト.パスタの母体となった中世農民のごった煮スープに,イタリア統一を陰で支えた料理書,そしてパスタをつくるマンマたち…….国民食の成立過程からイタリアをみつめます.(カラー16頁)
■内容紹介
パスタ大好き! という人は,中高生のみなさんにもたくさんいらっしゃることでしょう.いまやパスタは,外食のランチなどを中心に,日本ですっかりおなじみのメニューとなりました.スパゲッティばかりでなく,ペンネのラグーソースとか,ニョッキのゴルゴンゾーラソースとか,特定の種類のパスタとそれにあわせたソースについて好みのある人,茹で具合についても,もちろん,ちょっと芯の残った「アルデンテ」じゃなくちゃね,というこだわりをもっている人もめずらしくないでしょう.そして,いつか,本場イタリアで食べてみたい,という夢をもっている人もいるかもしれませんね.
でも,実はその「本場」イタリアでは,アルデンテが好まれるようになったのは,わりと最近のことなのです.パスタのルーツは古代ローマにまでさかのぼりますが,現在のような茹でパスタが誕生したと思われる中世では,実はパスタは2時間も煮られていたのです! それに,その時代には,私たちがパスタのソースといってまず思い浮かべる,「トマトソース」は存在しませんでした.なぜなら,トマトはもともとヨーロッパには存在しない植物で,大航海時代になって新大陸からもたらされたものだからです.では,いったい当時はどんな味付けでパスタを食べていたのでしょうか.ちょっと気になりませんか?
パスタはイタリアの国民食です.それぞれの地方に独自の名物パスタがある一方で,みながパスタを好むという点で,パスタはイタリア人をイタリア人たらしめている料理だと言われています.それだけ,イタリアという国とそこに暮らす人々の歴史とは,切っても切れない関係にある料理なのです.パスタの麺や具・ソース,そしてそれが載せられた食卓の様子を時代にそってたどってみると,それはイタリア(とヨーロッパ)の歴史を追うことになります.パスタは,イタリアという国家の統一にすら一役買っているのです!
パスタを通して,イタリア史をみる.そんな,一石二鳥のおいしい読書を,どうぞお楽しみ下さい.
はじめに――日本のパスタ事情
大人気メニュー・パスタ/日本のパスタ・ことはじめ/戦後のアメリカ式スパゲッティ/つけあわせのスパゲッティとマカロニ/ファミレスとスパゲッティ専門店の広まり/国民食へ/日本の麺文化とパスタ/パスタの故郷イタリア
第1章 麺が水と出会うまで
パスタ大国・イタリア/パスタの種類と定義/小麦の歴史/ギリシャ人が伝えたパンとオリーブ/古代ローマの「パスタ」/ゲルマン民族の侵入/ゲルマン民族の食文化とパスタの衰退/パスタの復活と誕生/北イタリアの生パスタ/アラブ人のもたらした乾燥パスタ/シチリアの文化と風/ジェノヴァから地中海へ/教皇と皇帝の対立が生んだ自治都市/コムーネの発達と食文化/ナポリのマッケローニ生産/パスタ・ギルドの誕生/多様化するパスタ/中世イタリア人はアルデンテが嫌い?
第2章 文明交流とパスタのソース
昔のパスタはどんな味?/チーズたっぷり,中世のパスタ/大航海時代の到来とスペイン・ポルトガルの台頭/乗り遅れたイタリア/スペイン支配下のナポリと新食材/唐辛子の登場/甘いパスタと砂糖/トマトとの出会い/カボチャとパスタ/トウモロコシとジャガイモ/ソバ/収奪される南イタリア/野菜食いからパスタ食いへ/ナポリの胃袋を満たす栄養食/技術革新とプルチネッラ/トマトソースの誕生/地域ごとのソース
第3章 貧者の夢とエリートの洗練
中世農民の暮らし/日常食の雑穀/パスタの原型「ミネストラ」/大食らいノッドの小話/パスタの食事作法/クッカーニャの国/『デカメロン』のパスタ天国/エリートたちの貢献/宮廷とルネサンス/どこの国でも似たような料理/マルティーノ,スカッピ,ラティーニのレシピ/高貴な詰め物パスタ/つけあわせとコース/演出する料理/飢え・疫病との闘い/バロック,光と陰の時代
第4章 地方の名物パスタと国家形成
特別料理としてのパスタ/パスタの形と名前/南北料理の特色/カンパニリズモの代表選手/【コラム・イタリア各州名物パスタ】/地方料理の成立/統一国家の成立と地方の名物パスタ/他国の餌食となるイタリア/ナポレオンの登場/リソルジメントへの流れ/イタリアの統一と国民意識/「イタリア料理の父」アルトゥージ/料理を通じた国家統一/ブルジョワの台頭と新しい食文化/料理の「平等」とレシピによる「言語教育」/国民食と地方料理
第5章 母と子の思い
母乳としてのパスタ/料理の担い手としての女性/料理上手が結婚の条件/美しいパスタを作り出す女性職人の手/マンマの味,パスタ/カッペッレッティのミネストラ/カトリックの女性像/ブルジョワの規範/ファシズム体制下での女性の役割/パスタと女性
第6章 パスタの敵対者たち
一九世紀末の庶民の食事/貧しい農民たちの近代/パスタを遠ざけた一九世紀の貧困/ファシズムが変えた食文化/パスタの敵対者の登場/貧困とアメリカ移民/イタリア人差別/非難された移民の食生活/ヨーロッパに広まるアメリカ神話/戦後復興とアメリカ/未来派宣言/打倒パスタ!/進む肉消費/自然から遠のく食事/女性の社会進出とパスタ
おわりに――歴史の中のパスタ
スパゲッティ食い=イタリア人/パスタとイタリア史/地中海式食事/スローフードとしてのパスタ
あとがき
イタリア年表
大人気メニュー・パスタ/日本のパスタ・ことはじめ/戦後のアメリカ式スパゲッティ/つけあわせのスパゲッティとマカロニ/ファミレスとスパゲッティ専門店の広まり/国民食へ/日本の麺文化とパスタ/パスタの故郷イタリア
第1章 麺が水と出会うまで
パスタ大国・イタリア/パスタの種類と定義/小麦の歴史/ギリシャ人が伝えたパンとオリーブ/古代ローマの「パスタ」/ゲルマン民族の侵入/ゲルマン民族の食文化とパスタの衰退/パスタの復活と誕生/北イタリアの生パスタ/アラブ人のもたらした乾燥パスタ/シチリアの文化と風/ジェノヴァから地中海へ/教皇と皇帝の対立が生んだ自治都市/コムーネの発達と食文化/ナポリのマッケローニ生産/パスタ・ギルドの誕生/多様化するパスタ/中世イタリア人はアルデンテが嫌い?
第2章 文明交流とパスタのソース
昔のパスタはどんな味?/チーズたっぷり,中世のパスタ/大航海時代の到来とスペイン・ポルトガルの台頭/乗り遅れたイタリア/スペイン支配下のナポリと新食材/唐辛子の登場/甘いパスタと砂糖/トマトとの出会い/カボチャとパスタ/トウモロコシとジャガイモ/ソバ/収奪される南イタリア/野菜食いからパスタ食いへ/ナポリの胃袋を満たす栄養食/技術革新とプルチネッラ/トマトソースの誕生/地域ごとのソース
第3章 貧者の夢とエリートの洗練
中世農民の暮らし/日常食の雑穀/パスタの原型「ミネストラ」/大食らいノッドの小話/パスタの食事作法/クッカーニャの国/『デカメロン』のパスタ天国/エリートたちの貢献/宮廷とルネサンス/どこの国でも似たような料理/マルティーノ,スカッピ,ラティーニのレシピ/高貴な詰め物パスタ/つけあわせとコース/演出する料理/飢え・疫病との闘い/バロック,光と陰の時代
第4章 地方の名物パスタと国家形成
特別料理としてのパスタ/パスタの形と名前/南北料理の特色/カンパニリズモの代表選手/【コラム・イタリア各州名物パスタ】/地方料理の成立/統一国家の成立と地方の名物パスタ/他国の餌食となるイタリア/ナポレオンの登場/リソルジメントへの流れ/イタリアの統一と国民意識/「イタリア料理の父」アルトゥージ/料理を通じた国家統一/ブルジョワの台頭と新しい食文化/料理の「平等」とレシピによる「言語教育」/国民食と地方料理
第5章 母と子の思い
母乳としてのパスタ/料理の担い手としての女性/料理上手が結婚の条件/美しいパスタを作り出す女性職人の手/マンマの味,パスタ/カッペッレッティのミネストラ/カトリックの女性像/ブルジョワの規範/ファシズム体制下での女性の役割/パスタと女性
第6章 パスタの敵対者たち
一九世紀末の庶民の食事/貧しい農民たちの近代/パスタを遠ざけた一九世紀の貧困/ファシズムが変えた食文化/パスタの敵対者の登場/貧困とアメリカ移民/イタリア人差別/非難された移民の食生活/ヨーロッパに広まるアメリカ神話/戦後復興とアメリカ/未来派宣言/打倒パスタ!/進む肉消費/自然から遠のく食事/女性の社会進出とパスタ
おわりに――歴史の中のパスタ
スパゲッティ食い=イタリア人/パスタとイタリア史/地中海式食事/スローフードとしてのパスタ
あとがき
イタリア年表
池上俊一(いけがみ・しゅんいち)
1956年愛知県生まれ.東京大学大学院総合文化研究科教授.専門は西洋中世・ルネサンス史.主な著書に,『ロマネスク世界論』(名古屋大学出版会),『ヨーロッパ中世の宗教運動』(ともに名古屋大学出版会),『シエナ――夢見るゴシック都市』(中央公論新社),『身体の中世』(筑摩書房),『世界の食文化(15)イタリア』(農山漁村文化協会),『儀礼と象徴の中世』(岩波書店),訳書に,ジャック・ルゴフ『中世の夢』(名古屋大学出版会)など多数.
1956年愛知県生まれ.東京大学大学院総合文化研究科教授.専門は西洋中世・ルネサンス史.主な著書に,『ロマネスク世界論』(名古屋大学出版会),『ヨーロッパ中世の宗教運動』(ともに名古屋大学出版会),『シエナ――夢見るゴシック都市』(中央公論新社),『身体の中世』(筑摩書房),『世界の食文化(15)イタリア』(農山漁村文化協会),『儀礼と象徴の中世』(岩波書店),訳書に,ジャック・ルゴフ『中世の夢』(名古屋大学出版会)など多数.
書評情報
毎日新聞(朝刊) 2012年7月25日
毎日新聞(朝刊) 2012年7月2日
専門料理 2012年4月号
週刊文春 2011年12月29日号
朝日新聞(朝刊) 2011年12月18日
東京新聞(朝刊) 2011年12月13日
毎日新聞(朝刊) 2012年7月2日
専門料理 2012年4月号
週刊文春 2011年12月29日号
朝日新聞(朝刊) 2011年12月18日
東京新聞(朝刊) 2011年12月13日