ジャーナリズムは再生できるか

激変する英国メディア

メディアの統廃合など,歴史的転換を迎える英国の新聞・放送界.ジャーナリズムの役割を問う英国に何を見るか.

ジャーナリズムは再生できるか
著者 門奈 直樹
ジャンル 書籍 > 岩波現代全書 > 政治・経済・現代社会
刊行日 2014/12/18
ISBN 9784000291507
Cコード 0336
体裁 四六 ・ 292頁
在庫 品切れ
〝メディア王〟ルパート・マードックが仕かけたメディア覇権戦争により,1980年代以降,欧米メディア界は激変を迎えた.とりわけ英国では,サッチャー政権以来,規制緩和などにより,新聞・放送界の歴史的転換が続く.スキャンダリズムが横行し,メディア不信も高まる中,ジャーナリズムの役割を問い続ける英国に,日本社会は何を見るべきか.

■編集部からのメッセージ

新聞の発達ともに,近代ジャーナリズムを育んできた英国.そうした英国のジャーナリズムに対する日本の読者のイメージは,ある意味「優等生」的なものとして写っているかもしれません.たとえば,NHKで何か問題が起きると,引き合いに出されるのは英国の公共放送BBCのあり方です.
 ところが,本書を読むと,英国メディアをめぐる現状は,必ずしもそうしたイメージだけではありません.市場化の浸透によるメディア間の競争の激化,新聞などの買収や統廃合,王室報道などにみられるスキャンダリズムといった様々な問題が紹介されています.
 しかし,そうした状況にあっても,英国社会では「ジャーナリズムとは何か」といった議論が,社会・市民の間で繰り返されてきました.また近年では,既存のメディアに寄らない「オルタナティブ・メディア」を立ち上げる動きも出て来ています.その背景には,権力を監視し,それが持つ情報を市民に知らせるというジャーナリズムの役割が,民主主義にとって必要不可欠であるという認識が,社会に根付いているからだと感じます.
 いま,日本では,従軍慰安婦と東京電力福島原発事故の報道をめぐり,『朝日新聞』に対する厳しい批判がなされています.他のメディアからは「売国」などといった激しい言葉が投げられ,政府による圧力も高まっています.ジャーナリズムの危機は,すなわち民主主義の危機です.こうした状況をどう見るか.何をすべきか.その有効な「ヒント」が,本書にはたくさん詰まっています.
田中宏幸

■ 関連書

● 『現代の戦争報道』 【岩波新書】門奈直樹
● 『ジャーナリズムの可能性』 【岩波新書】高橋敏
● 『〈オンナ・コドモ〉のジャーナリズム――ケアの倫理とともに』 林香里
● 『検証 日本の組織ジャーナリズム――NHKと朝日新聞』 川崎泰資,柴田鉄治
● 『組織ジャーナリズムの敗北――続・NHKと朝日新聞』 川崎泰資,柴田鉄治
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