漱石 母に愛されなかった子

現代を代表する文芸評論家が,「出生の秘密」というまったく新たな視点から漱石作品の読みなおしをはかる.

漱石 母に愛されなかった子
著者 三浦 雅士
通し番号 新赤版 1129
ジャンル 書籍 > 岩波新書 > 文学
刊行日 2008/04/22
ISBN 9784004311294
Cコード 0295
体裁 新書 ・ 並製 ・ カバー ・ 254頁
定価 924円
在庫 在庫僅少
漱石を生涯苦しめたのは「近代の不安」などではなかった.それは母親の愛を疑うという,ありふれた,しかし人間にとって根原的な苦悩であった.『坊っちゃん』から『明暗』まで,漱石作品は徹底して「出生の秘密」への問いにつらぬかれている──現代を代表する文芸評論家がまったく新たな視点から漱石作品の読みなおしをはかる.


■決して証明できない「愛」をめぐって
 母の愛を疑い、その疑いを覆い隠す。……どうもそれは、人間というものの仕組みに深くかかわっているように思えます。漱石を手がかりにそのことを考えてみたい。あるいは、そのことを手がかりに漱石について考えてみたい。漱石という作家は、本人が意識していたかどうかはともかく、そのことについて集中的に考えていたと思われるからです。
(本文より)
第一章 母に愛されなかった子――『坊っちゃん』    

第二章 捨て子は自殺を考える――『吾輩は猫である』
   
第三章 登校拒否者の孤独――『木屑録』と『文学論』  

第四章 母を罰する――『草枕』と『虞美人草』    

第五章 母から逃れる――『三四郎』『それから』『門』  

第六章 母に罰せられる――『彼岸過迄』
   
第七章 向き合うことの困難――『行人』と『心』
   
第八章 孤独であることの意味――『道草』  

第九章 承認をめぐる闘争――『明暗』

 あとがき
三浦雅士(みうら・まさし)
1946年青森県生まれ。評論家。
著書─『私という現象』(講談社学術文庫)
   『メランコリーの水脈』(講談社文芸文庫)
   『寺山修司―鏡のなかの言葉』(新書館)
   『小説という植民地』(福武書店)
   『身体の零度』(講談社選書メチエ)
   『青春の終焉』(講談社)
   『バレエ入門』(新書館)
   『考える身体』(NTT出版)
   『批評という鬱』(岩波書店)
   『出生の秘密』(講談社)ほか

書評情報

東京新聞(朝刊) 2008年7月6日
毎日新聞(朝刊) 2008年6月8日
読売新聞(朝刊) 2008年6月8日
毎日新聞(夕刊) 2008年5月28日
朝日新聞(朝刊) 2008年5月25日
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