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生活保護から考える

大きな岐路を迎えた生活保護制度.今,何が起こっているのか.当事者の声や現状を紹介,問題の根源を問う.

生活保護から考える
著者 稲葉 剛
通し番号 新赤版 1459
ジャンル 書籍 > 岩波新書 > 社会
刊行日 2013/11/20
ISBN 9784004314592
Cコード 0236
体裁 新書 ・ 並製 ・ カバー ・ 222頁
在庫 品切れ
すでに段階的引き下げが始まっている生活保護制度.生きるための最後の砦であるこの制度がこの秋,大きな岐路を迎えている.不正受給の報道やバッシングのなか,どのような事態が起ころうとしているのか.生々しい当事者の声を紹介するとともに現場の状況を報告,いま,何が問題なのか,その根源を問う.
はじめに

第1章 崩される社会保障の岩盤
 「働いた者がバカを見る制度」なのか/猛暑の夏に起こったこと/夏季加算の新設を求めて/安倍政権による基準の引き下げ/基準部会の検証は活かされたか/小泉政権における老齢加算廃止/なぜ二〇〇八年と二〇一一年を比較するのか/生活扶助相当CPIの算出方法/脅かされるいのちと暮らし/子どもたちの将来に与える影響/排除されるボーダー層/ 「補足性の原理」とは/制度からの排除によって何が起きるのか/ほかの制度への波及/就学援助の縮小と最低賃金への影響/物価上昇政策がもたらすこと/資産要件の厳しさ/医療費を支払うと……/封印された「ナショナルミニマム」/強行された基準引き下げ

第2章 届かない叫び声
 切符を渡されて、たらい回しに/厚労省による是正指導/窓口で行なわれる虚偽の説明/ 「水際作戦」の背景にあるもの/不正受給キャンペーンから一二三号通知へ/餓死、路上死の増加/自治体ごとの恣意的な判断基準/ 「ヤミの北九州方式」/裏と表の使いわけをする厚労省/厚労省の通知が生活保護利用者を増やしたのか/生活保護の捕捉率/生活保護制度の認知度が低い/貧困を直視しない政治/相対的貧困率の発表/スティグマを強化させた生活保護バッシング/生活保護の現物給付化案/国連からの勧告/ 「裏システム」の「表」化に動き出した政府

第3章 家族の限界
 親族間の暴力と支配/ 「私」を、「親密」と「個」に/生活保護を活用して親子を分離する/芸能人親族の生活保護利用/扶養義務を強化する法改正/生活保護と扶養義務との関係/扶養義務が「優先」に/公的扶助と私的扶養の線引きのわかりにくさ/中途半端に終わった民法改正/諸外国では/貧困の世代間連鎖が悪化/生活保護世帯の高校生の声/障がい者の自立生活にも影響/扶養義務強要は家族関係を破壊/DV・虐待の被害者に深刻なダメージ/社会問題を「私的領域」に押し込める/自民党のめざす社会保障ビジョン/ 「日本型福祉社会」の崩壊/家族の支え合いは限界/ 「社会保障と税の一体改革」の変質/ 「絆原理主義」

第4章 当事者の一歩
 当事者が声をあげられない/親の介護のために離職/初めての路上生活/路上からの生活保護申請/生活保護利用者への就職差別/当事者の支え合いをつくる/福島からの避難者を支援/ 「一人ひとり、その人にあった言葉をかけてもらいたい」/精神疾患で働けなくなり/生活保護を利用している自分を肯定できない/二度目の生活保護申請/当事者の声を政策に/生活保護利用者によるデモ/身体障がい者の当事者として/福祉予算削減の動きに懸念/ロビー活動に参加/数ある制度の一つとして

第5章 問われる日本社会
 自民党議員による人権制限論/小野市の福祉制度利用者「監視」条例/一九五〇年の生活保護法の抜本的な改正/利用者バッシングと社会保障費抑制/問題だらけの生活保護法改正案/切り縮められた「自立」概念/生活困窮者自立支援法案の問題点/貧困をなくすための総合的政策を/ 「生活保障法」へ/ケースワークの質の確保/世帯単位の緩和/生活保護利用者は「徴兵逃れ」か/石原吉郎の語る「弱者の正義」/基準引き下げに対する不服審査請求

あとがき
主要引用・参考文献
稲葉 剛 (いなば つよし)
 1969年広島生まれ.東京大学教養学部卒業.94年より,新宿において路上生活者支援の活動に取り組む.2001年,湯浅誠氏らとともに,自立生活サポートセンター・もやいを設立.現在,理事長.生活保護問題対策全国会議幹事.住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人.生活困窮者の支援を続けるかたわら,各地で人権や貧困問題の講演をおこなっている.著書に『ハウジングプア』,『貧困待ったなし!』(共著)など.

書評情報

望星 2014年7月号
しんぶん赤旗 2014年2月16日
東京新聞(朝刊) 2014年2月2日
読売新聞(朝刊) 2014年1月26日
週刊金曜日 2014年1月17日号
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