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唐物の文化史

舶来品からみた日本

正倉院の宝物から毛皮,香料,書,茶,珍獣まで,モノを通じて日本文化の変遷を追う.【カラー口絵8頁】

唐物の文化史
著者 河添 房江
通し番号 新赤版 1477
ジャンル 書籍 > 岩波新書 > 芸術
刊行日 2014/03/20
ISBN 9784004314776
Cコード 0221
体裁 新書 ・ 並製 ・ カバー ・ 250頁
在庫 品切れ
正倉院の宝物,艶やかな織物や毛皮,香料,楽器,書,薬,さらには茶や茶器,珍獣まで…….この国の文化は古来,異国からの舶来品,すなわち「唐物」を受け入れ吸収することで発展してきた.各時代のキーパーソンとの関係を軸に,唐物というモノを通じて日本文化の変遷を追う,野心的な試み.【カラー口絵8頁】


■編集部からのメッセージ
 なぜ日本人は舶来ブランド品を愛するのか?

 「唐物(からもの)」という言葉に、皆さま聞き覚えがおありでしょうか。ひとことで言えば「舶来ブランド品」。遠く万葉集の時代から日本人は舶来品に憧れ、その時々の文化のなかに取り入れてきました。たとえば毎年、春と秋に一部が公開されて大勢の人が見学に訪れる正倉院の宝物にも、多くの唐物が含まれています。
 日本の文化史には、じつにさまざまな舶来品が浮かんできます。艶やかな織物や毛皮、楽器、香料、家具、食器、書、紙、薬、茶、果ては象などの珍獣まで……。この国の文化の歴史は舶来品ぬきにはあり得なかったのだとあらためて感じられます。またそれぞれの時代に、唐物に憧れ、収集し、愛でて広めたキーパーソンが存在するのも面白いところ。聖武天皇や嵯峨天皇、あるいは平安貴族の筆頭である藤原道長、金閣寺で知られる足利義満、婆娑羅大名の異名をとった佐々木道誉、そして織田信長や豊臣秀吉と、枚挙にいとまがないほど。彼らがいかに唐物と接し、またそれを利用したのか、そこにひとつの歴史の縦軸が見えてくるのも面白いところです。
 本書にはカラー口絵(8頁)をはじめ、沢山の図版を掲載しました。著者渾身のスリリングな叙述とあわせ、正倉院宝物から江戸の唐物屋まで、絢爛豪華な世界をどうぞお楽しみください。
はじめに

第一章 「唐物」のはじまり―正倉院と聖武天皇
唐物のルーツをたどる/『万葉集』の中の「舶来品」/日本産の「からもの」/正倉院の錦の逸品/聖武天皇の遺品あれこれ/遣唐使・吉備真備がもたらしたもの/聖武天皇の舶来趣味/聖武朝の国際関係/新羅使がもたらした舶来品/鑑真の来朝/王羲之父子の書跡/異国文化受容の糧として

第二章 百花繚乱、貴族があこがれた「異国」―「国風文化」の実像
嵯峨天皇という人/「茶」の伝来/王者を彩る文物/正倉院の新羅琴/嵯峨期と渤海/渤海国使と正倉院宝物/承和の遣唐使/仁明天皇の唐物趣味/富裕層への広がり/「国風文化」の実像/黄金と「火鼠の皮衣」/『うつほ物語』と二つの交易ルート/秘色青磁と瑠璃/俊蔭が招来した唐物/蔵開以降の世界

第三章 王朝文学が描く唐物趣味―『枕草子』『源氏物語』の世界から
『枕草子』を読み解く/唐の紙と青磁/定子の華やかな正装/「この世をば わが世とぞ思ふ」/道長の書物への愛着/入宋僧との交流/実資が残した記録/『源氏物語』の時代/源氏の女君たちと和漢の構図/薫物は和か漢か/『うつほ物語』と『源氏物語』/光源氏の見事な手本/「光源氏」にあこがれた人々

第四章 武士の時代の唐物―福原・平泉・鎌倉
平清盛の台頭/清盛と『源氏物語』の明石一族の栄華/福原での日宋貿易/「揚州の金、荊州の珠……」/『平家納経』と『太平御覧』/世界遺産・平泉と唐物/『吾妻鏡』の記事/鎌倉将軍と北条一族/沈没船は語る/渡海僧・渡来僧の時代/金沢文庫の遺物から/兼好の唐物嫌い/『明月記』と『徒然草』

第五章 茶の湯と天下人―中世唐物趣味の変遷
バサラ大名、佐々木道誉/道誉の「逸脱の美学」/足利義満と「日本国王」/朝鮮との外交/義満の文化戦略/美術品としての唐物/『君台観左右帳記』の世界/義政と書院の茶/「つくも茄子」の行方/「和漢のさかいをまぎらかす」/信長の名物狩り/「茶湯御政道」/信長御物から太閤御物へ/家康から柳営御物へ

第六章 庶民が夢みる舶来品へ―南蛮物・阿蘭陀物への広がり
家康の「御分物」/南蛮貿易のはじまり/信長・秀吉の南蛮趣味/秀吉の強硬外交/家康の親善外交/南蛮貿易の終焉とオランダの台頭/鎖国体制の確立/カピタンたちの記録/「蘭癖の将軍」吉宗/朝鮮人参とサトウキビの国産化/天皇に謁見した象/庶民たちの「象フィーバー」/江戸初期の唐物屋/西鶴のまなざし/庶民でにぎわう唐物屋/阿蘭陀趣味の流行/金唐革の変貌/唐物屋の終焉

終章 「舶来品」からみた日本文化
唐物の歴史/尚古趣味と新渡り物/和製の唐物/唐物の日本的変容/「日本の中の漢」に位置する唐物/「日本の中の和」にとりこまれる唐物/「和漢のさかいをまぎらかす」再考

参考文献
あとがき
河添房江(かわぞえ・ふさえ)
1953年生まれ。1985年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。現在、東京学芸大学教授、一橋大学大学院連携教授、博士(文学)。専攻は、平安文学・平安文化。
著書に、『性と文化の源氏物語』(筑摩書房)、『源氏物語時空論』(東京大学出版会)、『源氏物語と東アジア世界』(NHKブックス)、『光源氏が愛した王朝ブランド品』(角川選書)、『古代文学の時空』(編著、翰林書房)など。

書評情報

しんぶん赤旗 2015年6月28日
古代文化 第66巻第3号(2014年12月)
読売新聞(朝刊) 2014年6月15日
日本経済新聞(朝刊) 2014年4月27日
朝日新聞(朝刊) 2014年3月30日
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