堕ちゆく者たちの反転

ベンヤミンの「非人間」によせて

ボードレール,カフカ,シュルレアリスト…….ベンヤミンが最後の希望を託した「非人間」の思想とは?

堕ちゆく者たちの反転
著者 道籏 泰三
ジャンル 書籍 > 単行本 > 哲学
刊行日 2015/03/06
ISBN 9784000610285
Cコード 0010
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 352頁
在庫 品切れ
ファシズムが台頭する危機の時代,ベンヤミンは従来の「人間」理念を転倒させた「非人間」なる概念を打ち出した.著者はこの謎めいた概念に,没落の歴史を眼前にしたベンヤミンの最後の希望を見る.「非人間」とは何か.バロック論,ボードレール論,カフカ論,シュルレアリスム論を軸に,その内実と射程を明らかにする.

■著者からのメッセージ

本書は,2年半ほど前の2012年秋,「ベンヤミンと「非人間」たち」と題した2日間の「岩波市民セミナー」で行った公開講座をもとに,その後大幅に加筆修正しつつ,新たに書き下ろしたものである.
 テーマはずばり「堕ちゆく者たちの反転」.その意味するところは,人間世界からとことん堕ちてゆく脱人間が我知らず反転することのなかにしか,この人間世界を刷新する道が見えてこないということだ.ベンヤミンは,こうした反転をはらんだ脱人間のありようを「非人間(Unmensch)」という独特の言い廻しで表現した.「非人間」とは,下降する脱人間と浮上する天使を合体させようとするベンヤミンの<異・思考>のキー概念でもある.
 本書はこの「非人間」の姿を,坂口安吾の小説を枕にしつつ,カール・クラウス,ブレヒト,ドイツ・バロック悲劇作家,カフカ,ボードレール,フランス・シュルレアリストなど,ベンヤミンを生涯にわたって惹きつけた作家たちのうちにあぶり出そうとしたものである.反転・逆説の<異・思考>は,論理を突き抜けた文学のなかにしか表現の場を見出しえない.本書が,そうした意味で,啓蒙論理にがんじがらめになったように見える現代の思想状況に批判的な一石を投じることにでもなればと切に願うしだいである.
道籏泰三(みちはた たいぞう)
1949年生まれ.1980年,京都大学大学院文学研究科博士後期課程中途退学.文学修士(京都大学).弘前大学講師,同助教授を経て,京都大学大学院人間環境学研究科教授.
〈著書〉『ベンヤミン解読』(1997年,白水社).
〈翻訳〉ヴァルター・ベンヤミン『来たるべき哲学のプログラム』(晶文社,1992年,新装版,2011年),ヴィルヘルム・エムリッヒ『アレゴリーとしての文学――バロック期のドイツ』(平凡社,1993年),ジークムント・フロイト『自我とエス』(『フロイト全集』第18巻所収,岩波書店,2007年)ほか多数.
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