監獄ビジネス

グローバリズムと産獄複合体

米国で拡大する民営監獄の実態を,人種差別や貧困との関係,各種産業との利益共同体の構造から探る.

監獄ビジネス
著者 アンジェラ・デイヴィス , 上杉 忍
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2008/09/26
ISBN 9784000224871
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 168頁
在庫 品切れ
近年,米国で急拡大する監獄の民営化とその歴史的背景とは何か.劣悪な囚人労働の実態,建設業やハイテク監視機器企業など各種産業と監獄の利益共同体の形成,輸出される経営モデルまで,矯正とビジネスが結びつく構造を分析する.監獄ビジネスにおいて人種差別や性差別,貧困はいかに強化されているか.対案はどこにあるか.

■著者からのメッセージ

 レーガン時代と呼ばれる1980年代に,監獄建設と大量収監がかつてない勢いで始まったが,当時,政治家たちは,収監者数を増やし刑期を伸ばす「犯罪に対する断固たる」立場が社会を犯罪から守るのだと論じた.しかしこの期間の大量収監は,犯罪発生率とほとんどあるいは全く関係がなかった.実際には,より多くの人々を監獄に入れてしまえば,安全な社会がもたらされるというよりも,より多くの監獄人口がさらにより多くの監獄人口をもたらしたというのが顕著な特徴だったのである.新しい監獄が建つたびにさらにまた新しい監獄が必要となった.合衆国の監獄制度が拡張するのにともなって,企業の監獄建設への参加,商品やサービスの提供,囚人労働の利用が拡大した.軍産複合体の台頭を思い起こさせるほどの規模で,監獄建設とその運営が,建設業から食品,保険医療設備にいたる巨額の資本をひきつけるようになった.そのため,われわれはこれを「産獄複合体」と呼ぶようになった.
……
 今では黒人やラティーノ,先住アメリカ人の社会では,まともな教育を受けるよりは投獄される可能性の方が高い.多くの若者にとって監獄に入れられることはある程度避けられない現実であり,それを避けるために多数の若者がやむなく軍隊に入る道を選んでいる.こうした事態を目にしているからこそ,われわれは今こそ,他のより良い対案を提起すべき時だと思うのだ.
(第1章より)
謝辞
第1章 監獄改革か,監獄廃止か
第2章 奴隷制・公民権・監獄問題
第3章 監獄と改革
第4章 ジェンダーに規定された監獄制度
第5章 産獄複合体
第6章 監獄のない世界へ
――教育・医療・福祉・司法の根本的変革を
 著者について
 原注
 訳者解説
著者
アンジェラ・デイヴィス(Angela Davis)
米国アラバマ州生まれ.社会学者,反人種差別主義・フェミニズム運動家.現在,カリフォルニア大学サンタクルズ校特任教授.UCLA,サンフランシスコ州立大学,スタンフォード大学,カリフォルニア大学バークレイ校等で教えた.監獄制度をめぐって,国内外で活発な著作・講演活動を続けている.邦訳書に『もし奴らが朝にきたら』,『アンジェラ・デービス自伝』(ともに現代評論社)など.詳細は本書「著者について」および「訳者解説」を参照.
訳者
上杉 忍(うえすぎ しのぶ)
横浜市立大学国際総合科学部教授.アメリカ史,黒人史,公民権運動史.一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了.1997年,一橋大学より博士号(社会学)を授与される.著書に『公民権運動への道』(岩波書店),『二次大戦下の「アメリカ民主主義」』(講談社選書メチエ),『アメリカの文明と自画像』(共著,ミネルヴァ書房),訳書に『アメリカ南部に生きる』(セオドア・ローゼンガーテン,共訳,彩流社),『アメリカの歴史』(全6巻)(メアリー・ベス・ノートン他,共訳,三省堂)など.

書評情報

図書新聞 2009年7月11日号
読売新聞(朝刊) 2008年11月9日
信濃毎日新聞(朝刊) 2008年11月9日
東京新聞(夕刊) 2008年10月31日
神奈川新聞 2008年10月26日
朝日新聞(朝刊) 2008年10月19日
北日本新聞(朝刊) 2008年10月19日
琉球新報(朝刊) 2008年10月19日
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