ルポ MOOC革命

無料オンライン授業の衝撃

ハーバード,スタンフォードなどの名門大学が講義の無料配信を始めた.この動きは教育に何をもたらすのか.

ルポ MOOC革命
著者 金成 隆一
ジャンル 書籍 > 単行本 > 教育
刊行日 2013/12/25
ISBN 9784000022309
Cコード 0037
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 290頁
定価 1,980円
在庫 在庫あり
「良質な高等教育は特権ではなくなった」――ハーバード大,マサチューセッツ工科大,スタンフォード大など,名門大学がインターネットで次々と講義の無料配信を始めた.全世界から集う受講生は700万人を突破.大学や企業は,受講生のデータを分析して,人材獲得競争を開始.日本の大学や高校はどうするのか.無料オンライン授業の創設者から各地の利用者の声まで.徹底取材にもとづくルポ.


■著者からのメッセージ
 私は大阪の新聞記者です.2011年夏から2年間,大阪府教育委員会の担当になり,初めて教育を取材することになりました.教育といえば,学校,先生,教育委員会,有識者,学習塾.最初はそんなイメージで取材をしていました.
 3か月が過ぎた頃,英誌エコノミストで,米国の教育NPOの記事を読みました.勉強を教えるネット動画5千本以上を無料公開しているNPOです.この民間団体の教材が,なんと公教育の場でも使われ始めているというではありませんか.驚きました.新たな取材現場として「ネット」も加えないとマズイと気付きました.
 調べると,魅力的なサイトがいくつも誕生していました.日本ではまったくニュースになっていないものばかり.新鮮なネタを探すことが仕事の記者ですから,そういったものが大好きです.ネットにつながる誰もが,いつでも,どこからでも,より良質な教育機会を得られるようにするために,教材を無料(格安)でネット公開する「オープンエデュケーション」の動向を追いかけ始めました.入学試験に合格できた人,学校や塾にお金を払える人,通学する時間を持てる人だけが受けてきた「教育」を,外に向けて「開いて」いく動き.多くの人が,機会均等の価値を認めると思いますが,そのムーブメントが教育分野で始まっていたのです.
 この動きの先頭を走る米国,チャンスを最大限に生かそうとするモンゴル,日本で活動する人々を取材してきました.「教育機会をつかみたい」「教育機会を広く提供したい」.どちらかの情熱に突き動かされている人々との出会いは刺激的でした.記者13年目ですが,これほど楽しい取材は数えるほどしかありません.大阪で取材をしながら,空いた時間をみつけては,あっちこっちに出張取材に出ました.
 本書は,その中間報告です.この動きに参入する個人,大学,企業が増えており,取材すればするほど,わからないことも出てきています.それでも最終章では私なりの考察をまとめました.読者の方々からご意見やご批判を頂戴できれば,今後の取材の糧にしたいと思います.ネットにつながれば,学びの地平線はほぼ無限に広がり始めています.一人でも多くの方に,このチャンスを満喫してほしい.本書がその一助になることを願っています.
はじめに 教育機会を広げるオープン・エデュケーション

第一章 MOOC誕生/大歓迎する利用者の熱狂
第二章 MOOCを提供するシリコンバレー企業
第三章 MOOCを提供する大学
第四章 利用する教育機関
第五章 教育の形を変えた男――サルマン・カーン
第六章 教室をひっくり返せ――自宅で講義,教室で宿題
第七章 どうする日本の大学
第八章 日本のオープン・エデュケーション
第九章 グーグルのムーク参戦,2014年へ

初出一覧
あとがき


巻末リスト・主なムーク講座
金成隆一(かなり りゅういち)
1976年生まれ.2000年,慶応大学法学部政治学科卒業後,朝日新聞入社.神戸支局,静岡支局,大阪社会部,米ハーバード大学日米関係プログラム客員研究員,国際報道部を経て,2011年秋から大阪社会部教育担当.共著に『今,地方で何が起こっているのか――崩壊と再生の現場から』(公人の友社).

書評情報

朝日新聞(朝刊) 2014年3月9日
日本経済新聞(朝刊) 2014年2月9日
週刊ダイヤモンド 2014年2月8日号
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