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岩波科学ライブラリー 139

新型インフルエンザH5N1

強毒性H5N1の発生は時間の問題だ.短期間で大流行し,全身感染で数日後に死に至る,その科学的根拠を示す.

新型インフルエンザH5N1
著者 岡田 晴恵 , 田代 眞人
ジャンル 書籍 > 自然科学書
書籍 > 岩波科学ライブラリー > 生命・医学
日本十進分類 > 自然科学
シリーズ 岩波科学ライブラリー
刊行日 2007/12/20
ISBN 9784000074797
Cコード 0347
体裁 B6 ・ 並製 ・ カバー ・ 124頁
在庫 品切れ
H5N1型インフルエンザは強毒性.発生は時間の問題だ.だれも免疫をもたないため,ふれれば全身感染をおこし,数日で死に至る可能性が高い.国内に侵入したら最後,あっという間に拡大するという.第一線の研究者が最新知見からそのメカニズムに迫り,科学的根拠を示す.さらにはワクチン開発の現状から対抗策を提案する.


■編集部からのメッセージ
 新型インフルエンザH5N1の発生した国から香港経由で帰国した翌朝,28歳の商社マンは……!
「起きたときに軽い倦怠感を覚えた.(中略)いつものように通勤の乗客で混雑する満員電車で出勤した.国立駅から,中央線で東京駅へ.(中略)東京駅からは山手線に乗り継ぎ浜松町へ,この時間の山手線は(中略)すし詰めの混雑だ.……」
  その日の午後,会議の席上で,急に高熱を発して倒れる.緊急搬送された病院では,最先端の感染症の知識をもつ医師らの懸命の治療によってしても,命を取り留めることはできず,4日後に亡くなった.

***

 これは,著者の岡田晴恵氏の既刊書『H5N1――強毒性新型インフルエンザウイルス日本上陸のシナリオ』(ダイヤモンド社)に描かれる,新型インフルエンザH5N1患者の死に至るまでの様子です.このあと,彼の接触した家族,会社の同僚だけでなく,同じ電車の車両に乗り合わせた人までがインフルエンザにかかり,あっという間に日本中に感染拡大,大勢の犠牲者が出るというシミュレーションです.
  それにしても疑問です.「新型インフルエンザなんて,本当に発生するの?」「たかがインフルエンザでしょう? H5N1はそんなに恐ろしいの?」「水際で防ぐことはできないの?」「拡大のスピードはそんなに速いの?」「感染力はそんなに強いの?」…….
  しかし,『新型インフルエンザH5N1』を読めば,これがフィクションでないということに納得するはずです.ここには『H5N1』の科学的証明があります.
  著者らの見解では,新型インフルエンザH5N1は確実に発生します.それは全身感染を起こし,数日のうちに死に至らしめる恐ろしい病気です.だれも免疫をもっていないため,接触すれば罹患します.新型インフルエンザ発生から日本への上陸,さらには拡大までの時間かせぎはできても,水際で防ぐことはきわめて難しい.いったん発生したら,あっという間に拡大します.その科学的裏づけにふれ,本当の恐ろしさを知ることになるでしょう.
  そして,本書を読み終わったときに,自衛策も含め,自分にできることはなにかを,それぞれの立場で考えてください.
序 章 迫られる対策

第1章 H5N1型の病原性の特性

第2章 病原性を規定する分子機構
 コラム スペインかぜインフルエンザの惨禍を検証する

第3章 ヒトへの感染のメカニズム
 コラム インドネシアのWHOへのウイルス検体提供拒否問題

第4章 新型インフルエンザH5N1とたたかう
 コラム WHOの勧告と未解決問題

あとがき
岡田晴恵(おかだ はるえ)
埼玉生まれ.順天堂大学医学部大学院博士課程中退,医学博士.ドイツマールブルク大学ウイルス学研究所客員研究員などを経て,現在,厚生労働省国立感染症研究所ウイルス第三部研究員.専門は感染免疫学,ワクチン学.
著書に『人類vs感染症』(岩波ジュニア新書),『感染症は世界史を動かす』(ちくま新書),『H5N1』(ダイヤモンド社),『パンデミック・フルー』(講談社),『H5N1型ウイルス襲来』  (角川SSC新書),共著書に『感染症とたたかう』(岩波新書),『強毒性新型インフルエンザの脅威』(藤原書店),『鳥インフルエンザの脅威』(河出書房新社)などがある.

田代眞人(たしろ まさと)
1948年東京生まれ.東北大学医学部卒業,医学博士.自治医科大学助教授などを経て,現在,国立感染症研究所ウイルス第三部部長,WHOインフルエンザ協力センター長.専門はウイルス学,感染症学.
共著書に『感染症とたたかう』(岩波新書) ,『強毒性新型インフルエンザの脅威』 (藤原書店)などがある.

書評情報

しんぶん赤旗 2008年2月10日

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