岩波科学ライブラリー 236

被曝評価と科学的方法

公式発表は被曝被害を過小に見せる方向にゆがんできた.科学を適切に用いて,そのゆがみを暴きだす.

被曝評価と科学的方法
著者 牧野 淳一郎
ジャンル 書籍 > 単行本
書籍 > 自然科学書
書籍 > シリーズ・講座・全集
書籍 > 岩波科学ライブラリー > 人物・社会
日本十進分類 > 自然科学
シリーズ 岩波科学ライブラリー
刊行日 2015/03/24
ISBN 9784000296366
Cコード 0340
体裁 B6 ・ 132頁
在庫 品切れ
原発事故後,行政や研究機関からデータそのものは発表されたとしても,その解釈が被害を過小に見せる方向にゆがんできた.公式発表を鵜呑みにするのではなく,自ら計算し確認する科学的方法を読者に示し,被曝被害評価をめぐる公式発表のゆがみを暴きだす.好評を得た『原発事故と科学的方法』の著者による第2弾.

■著者からのメッセージ

2014年の9月になって,事故当時の福島第一原発の所長であった吉田氏の,政府事故調査委員会への証言である「吉田調書」が公開され,現在(2015年1月現在)では210人に及ぶ関係者の調書が公開されています.それらから明らかなことは,電力会社や政府の責任ある地位にいた人々は,もちろん私が前著で述べたような,ある意味初歩的な事実は十分に理解していたということ,また,それにもかかわらず,高濃度に汚染される可能性が予見できた地域に対してなんの対策もとらず,また多くの地域が実際に汚染された後ですら,空間線量率の測定値は公表するものの,住民にむけたその意味の解説も,避難指示などの対策も,誰もしようとしなかった,ということです.
 汚染された地域の住民に対して適切な情報提供も避難指示もなされなかった,ということは,本来避けることができた被曝とそれによる健康被害が発生する可能性がある,ということと,その被曝とそれによる健康被害に対しても電力会社や政府はその存在を進んで認めようとはしない可能性がある,ということを意味しています.つまり,事故の規模と同様に,被曝量も健康被害も,過小評価される可能性がある,ということです.
――本書「まえがき」より
まえがき

第 1 章 過小評価の論理──鼻の被曝について

第 2 章 チェルノブイリでの甲状腺がん──公式発表の前提と私たちに必要な情報とのちがい

第 3 章 チェルノブイリでの甲状腺がん以外の健康被害──既存のリスク係数よりも大きすぎるからありえない?

第 4 章 甲状腺がん発生に「地域差はない」のか?──県民健康調査からみえることⅠ

第 5 章 被曝量推定は信頼できるのか──県民健康調査からみえることⅡ

第 6 章 これからどうなるかを考える

第 7 章 まとめ


牧野淳一郎 (まきのじゅんいちろう)
 1963年生まれ.1990年東京大学大学院総合文化研究科(広域科学専攻)博士課程修了.東京大学助手,助教授,国立天文台教授,東京工業大学教授を経て,理化学研究所計算科学研究機構に勤務.Gordon Bell 賞(1995年から7回受賞),日本天文学会林忠四郎賞(1998年)受賞.主な研究分野は理論天文学,恒星系力学,並列計算機アーキテクチャ.著書に『原発事故と科学的方法』(岩波科学ライブラリー),“Scientific Simulations with Special-Purpose Computers──The GRAPE Systems”(共著,John Wiley & Sons, Chichester),『パソコン物理実地指導』(共立出版),『研究評価・科学論のための科学計量学入門』(共著,丸善),『とんでる力学』(丸善)等がある.
 日記 http://jun-makino.sakura.ne.jp/Journal/journal.html と twitter(jun_makino)で考えていることなどを発信中.

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