芭蕉の恋句
閑寂の詩人とよばれる芭蕉の知られざる美しい恋の名句の鑑賞を通じて,芭蕉の芸術への新しい視点を開く.
わび・さびの詩人,自然を愛し清僧のごとく旅に生きたといわれる芭蕉は,数多くの美しい恋の句を残した濃艶の詩人でもあった.連句の研究と実作に長年打ちこんできた著者は,本書で従来なぜか軽視されてきた芭蕉の恋の名句を年代順に選び,鑑賞する.読者は,物思いにふける少女,悲愴な恋に身を焼く女,別れた女房への未練といった恋愛の種々相が恋のあわれにまで高められているのを知って,芭蕉の芸術を再認識するにちがいない.