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悪について

人間の欲望をとことん見据えたカント倫理学を軸に,人間にとっての〈悪〉と,そこからの生を論じる.

悪について
著者 中島 義道
通し番号 新赤版 935
ジャンル 書籍 > 岩波新書 > 哲学・思想
刊行日 2005/02/18
ISBN 9784004309352
Cコード 0210
体裁 新書 ・ 並製 ・ カバー ・ 228頁
在庫 在庫あり

残虐な事件が起こるたび,その〈悪〉をめぐる評論が喧しい.しかし,〈悪〉を指弾する人々自身は,〈悪〉とはまったく無縁なのだろうか.そもそも人間にとって〈悪〉とは何であるのか.人間の欲望をとことん見据え,この問題に取り組んだのがカントだった.本書では,さまざまな文学作品,宗教書などの事例を引きつつ,カントの倫理学を〈悪〉の側面から読み解く.

はじめに

第一章 「道徳的善さ」とは何か
 ラスコーリニコフ/思索によってではなく行為によってはじめて道徳的世界が開かれる/道徳的センス/善意志/ 「義務に適った行為」と「義務からの行為」/道徳法則と定言命法/格律と性格/命法と行為とのあいだ/目的としての人間性/形式としての悪/肥沃な低地

第二章 自 己 愛
 誰も自己愛の引力圏から抜け出すことはできない/ 「うぬぼれ」というもの/自己愛と定言命法/自殺について/より完全になろうとする義務/社会的功績は負い目である/賢さの原理/世間的な賢さと私的な賢さ/道徳的善さと純粋さ/善を求めると悪に陥るという構造/幸福の追求/幸福を受けるに値する/苦行の否定/他人に同情すべきか/自己犠牲的行為

第三章 噓
 適法的行為を器用にこなす人々/道徳法則に対する尊敬/真実性の原則/真実性と友の生命/窮余の噓/愛と噓

第四章 この世の掟との闘争
 適法的行為と非適法的行為/義務の衝突/何が適法的な行為であるか/迫害されている者たち/道徳性と世間のしがらみ/漱石は道徳的である/息子を殺さねばならない

第五章 意志の自律と悪への自由
 意志の自律と他律/ 「文字」と「精神」/自己愛以外の意志の他律/アブラハム/私は貝になりたい/ 「文字」が「精神」を獲得するとき/アイヒマン/私が誤っていないという保証はどこにもない/堕胎について、プランテラの場合/良心の法廷/ウィーンでの出来事/悪への自由

第六章 文化の悪徳
 意志(Wille)と意思(Willkühr)/動物と悪魔とのあいだ/悪の場所/動物性の素質と人間性の素質/実践理性と人類の発展史/悪への性癖

第七章 根 本 悪
 人間心情の悪性/悪性の格律を選択する性癖/道徳秩序の転倒/根本悪はあらゆる格律の根拠を腐らせる/出口なし/課せられているが答えることができない問い/ふたたびプランテラの場合/根本悪と最高善

あとがき
中島義道 (なかじまよしみち)
 1946年 福岡県生まれ
 1977年 東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了,1983年ウィーン大学基礎総合学部修了(哲学博士).その後,電気通信大学教授を経て,
 現在─「哲学塾カント」主宰
 著書─『ウィーン愛憎』『続・ウイーン愛憎』(中公新書)
    『哲学の教科書』(講談社学術文庫)
    『「時間」を哲学する』(講談社現代新書)
    『うるさい日本の私』(角川文庫)
    『カントの人間学』(講談社現代新書)
    『孤独について』(文春新書)
    『ひとを〈嫌う〉ということ』(角川文庫)
    『カントの時間論』(講談社学術文庫)
    『悪への自由』(勁草書房)
    『後悔と自責の哲学』(河出文庫)
    『不在の哲学』(ちくま学芸文庫)
    『差別感情の哲学』(講談社学術文庫)
    『ヒトラーのウィーン』(ちくま文庫)ほか

書評情報

ダ・ヴィンチ 2005年6月号
毎日新聞(朝刊) 2005年3月20日
産経新聞(朝刊) 2005年3月6日

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