日没

ポリコレ、ネット中傷、出版不況、国家の圧力。海崖に聳える〈作家収容所〉を舞台に「表現の不自由」の近未来を描く、戦慄の最新作。

日没
著者 桐野 夏生
ジャンル 書籍 > 単行本 > 文学・文学論
刊行日 2020/09/29
ISBN 9784000614405
Cコード 0093
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 332頁
定価 1,980円
在庫 在庫あり
小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは「文化文芸倫理向上委員会」と名乗る政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。「社会に適応した小説」を書けと命ずる所長。終わりの見えない軟禁の悪夢。「更生」との孤独な闘いの行く末は――。
装丁:鈴木成一デザイン室 / 装画:大河原 愛

推薦のことば

 

本の力ってすごい。
この小説を私は一生忘れないと思います。
(「王様のブランチ」TBS系 毎週土曜あさ9時30分より生放送 にて)

大友花恋さん 

  

これはただの不条理文学ではない。
文学論や作家論や大衆社会論を内包した
現代のリアリズム小説である。
国家が正義を振りかざして蹂躙する表現の自由。
その恐ろしさに、読むことを中断するのは絶対に不可能だ。

筒井康隆さん 

  

息苦しいのに、読み進めずにはいられない。
桐野作品の読後には、いつも鈍い目眩が残ると知っていても――。
自粛によって表現を奪い、相互監視を強める隔離施設。
絶巧の文章が、作中世界と現実とを架橋する。

荻上チキさん 

  

個人的な価値観、個人的な言葉、個人的な行動をもとにして作品を創る。
それは自由への具体的な希求であり表現だ。
その基本がいつの間にか奪われ拘束される。
『日没』は桐野夏生でさえ越えられない身のすくむ現実がすぐそこにあることを告げる。

石内 都さん 

  

絶望の中でも光を探すことができる、と教わってきた。
だが、この物語にそういう常識は通用しない。
読みながら思う。今、この社会は、常識が壊れている。
どこに向かっているのだろう。もしかして絶望だろうか。

武田砂鉄さん 

  

著者のことば

 

 この作品の主人公は、小説家のマッツ夢井です。マッツは、エッチな小説をうまく書きたいと願ったり、才能ある同業者に嫉妬したりして、猫と暮らしています。
 ところが、ある日突然、マッツはブンリンというところから召喚状をもらいます。そして、見知らぬ岬の療養所に行く羽目に。そのうち出られるだろうと高を括っているうちに、マッツは自分が幽閉されていることに気付くのです。
 何かが変だ。何かが変わってきている。
 違和感を覚えながらも日常に流されているうちに、いつの間にか、世の中の方がすっかり変わってしまっている。この小説は、そんな怖い話です。
 フィクションとして楽しんで頂けたら嬉しいですが、世界にはこんな話はいくらでも転がっています。フィクションが現実にならないことを、心から祈ります。

桐野夏生

  

『日没』特設サイト
https://www.iwanami.co.jp/sunset/

『日没』Twitterアカウント
@nichibotsu2020

武田砂鉄さん×桐野夏生さんの対談 “「日没」を迎えて” (「図書」10月号(10月1日発売)に掲載)は、「web岩波 たねをまく」にてお読みになれます
https://tanemaki.iwanami.co.jp/posts/4031

リリース(2020年7月)
PDFファイル[884KB]

第一章 召喚
第二章 生活
第三章 混乱
第四章 転向
桐野夏生(きりの・なつお)
1951年生まれ。 93年「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞受賞。 99年『柔らかな頬』(講談社)で直木賞、 2003年『グロテスク』(文藝春秋)で泉鏡花文学賞、 04年『残虐記』(新潮社)で柴田錬三郎賞、 05年『魂萌え!』(毎日新聞社)で婦人公論文芸賞、 08年『東京島』(新潮社)で谷崎潤一郎賞、 09年『女神記』(KADOKAWA)で紫式部文学賞、 『ナニカアル』(新潮社)で10年、 11年に島清恋愛文学賞と読売文学賞の二賞を受賞。 1998年に日本推理作家協会賞を受賞した『OUT』(講談社)で、 2004年エドガー賞(Mystery Writers of America主催)の候補となった。 2015年、紫綬褒章を受章。『ハピネス』(光文社)、『夜また夜の深い夜』(幻冬舎)、『抱く女』(新潮社)、『バラカ』(集英社)、『猿の見る夢』(講談社)、『夜の谷を行く』(文藝春秋)、『デンジャラス』(中央公論新社)、『とめどなく囁く』(幻冬舎)など著書多数。
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