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ケルト人の夢

コンゴ-アマゾン-アイルランド。世界史を動かす原理を一身に体現したかのような英雄、そして殉教者の物語。

ケルト人の夢
著者 マリオ・バルガス=リョサ , 野谷 文昭
ジャンル 書籍 > 単行本 > 文学・文学評論
刊行日 2021/10/27
ISBN 9784000614740
Cコード 0097
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 550頁
在庫 在庫あり
一九一六年、大英帝国の外交官であった男に死刑が執行された。その名はロジャー・ケイスメント。植民地主義の恐怖を暴いた英雄であり、アイルランド独立運動に身を捧げた殉教者である。同性愛者ゆえに長くその名は忘れられていたが、魂の闇を含めて、事実と虚構が織りなす物語のうちによみがえった。人間の条件を問う一大叙事詩。


■内容紹介
20世紀初頭、コンゴとアマゾンの先住民に対する虐待、植民地主義の罪を告発したアイルランド人がいた。その名はロジャー・ケイスメント、大英帝国の外交官である。しかし彼は祖国アイルランドの独立を成し遂げるため、第一次大戦中はドイツに接近、反逆罪で絞首刑となる。同性愛者であったが故に翻弄されていく運命。恩赦の請願さえも聞き入れられず、希望は潰えてしまうのか。英雄であり、反逆者でもあった百年前の外交官を描きながら、歴史書よりも深く善悪の境界を問い、評伝よりも大きなスケールで人間の不思議さに迫る。ノーベル賞作家がよりよき世界を希求するすべての人に贈る未来のための賛歌。


■推薦コメント
世界史を動かす原理を一身に体現した人物の物語。彼は英国領事として赴任した先のコンゴとアマゾンで先住民の惨状を告発する。更には郷里アイルランドの独立を謀って、絞首刑になる。しかも、この男は実在した。
池澤夏樹

あらゆる混沌と不条理が生茂るジャングルの中を傷だらけになって彷徨いながら、人権という「夢」へ情熱の炎を燃やし尽くした主人公に圧倒された。バルガス=リョサは、史上最強の魂の強壮剤を文字の中から創り上げた。
ヤマザキマリ

リョサの魔術は、すさまじい差別の暴力と不正義に抗っているのが読者の私であるかのように錯覚させる。いや、錯覚ではないのかもしれない。
星野智幸
ロジャー・ケイスメント関連地図
主要登場人物一覧

コンゴ
アマゾン
アイルランド
エピローグ

謝辞
訳者あとがき
参考文献
マリオ・バルガス= リョサ(Mario Vargas Llosa)
1936年ペルー生まれ。1959年『ボスたち』でデビュー。1963年『都会と犬ども』でビブリオテーカ・ブレーベ賞を受賞し、1966年代表作となる『緑の家』を刊行した。その他の著作に『ラ・カテドラルでの対話』(1969)、『世界終末戦争』(1981)、『誰がパロミノ・モレーロを殺したか』(1986)、『密林の語り部』(1987)、『水を得た魚――マリオ・バルガス・ジョサ自伝』(1993)、『楽園への道』(2003)、『プリンストン大学で文学/政治を語る』(2017)などがある。2010年、ノーベル文学賞受賞。

野谷文昭(のや ふみあき)
1948年神奈川県生まれ。ラテンアメリカ文学研究者・翻訳家。東京大学名誉教授、立教大学名誉教授。主な著書に、『マジカル・ラテン・ミステリー・ツアー』(五柳書院、2003)、『日本の作家が語る ボルヘスとわたし』(編著、岩波書店、2011)など。主な訳書に、ボルヘス『七つの夜』(岩波文庫、2011)、バルガス=リョサ『フリアとシナリオライター』(国書刊行会、2004)、ガルシア=マルケス『純真なエレンディラと邪悪な祖母の信じがたくも痛ましい物語』(河出書房新社、2019)、『20世紀ラテンアメリカ短篇選』(編訳、岩波書店、2019)などがある。2010年、会田由翻訳賞受賞。

受賞情報

第59回日本翻訳文化賞(野谷文昭さん)
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