クリティーク社会学

慈悲のポリティクス

モーツァルトのオペラにおいて、誰が誰を赦すのか

純粋で絶対的な慈悲が成り立つ世界とは。モーツァルトの赦しを題材とする後期オペラから追求する。

慈悲のポリティクス
著者 奥村 隆
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
シリーズ クリティーク社会学
刊行日 2022/01/13
ISBN 9784000271783
Cコード 0336
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 224頁
定価 2,420円
在庫 在庫あり
どんな相手も無条件に愛し赦す、そうした純粋で絶対的な慈悲の世界が存在するとしたら――。だがそれは、現実には存在し得ないものであり、仮に実現したとしても生と社会への不都合に帰結してしまう。本書では、モーツァルトの赦しを題材とする後期のオペラ作品から、この二重の困難をめぐるアポリアを追求する。
第1章 慈悲の問題系――モーツァルトのオペラにおける「赦し」
 1  慈悲とその困難
 2  モーツァルトのオペラと「赦し」――『イドメネオ』と『後宮からの逃走』
 3  ふたつの世界の葛藤――エリアスの仮説から

第2章 赦しによる共同体――『フィガロの結婚』
 1  中断された赦し――『フィガロの結婚』第一幕・第二幕
 2  三つの和解――『フィガロの結婚』第三幕・第四幕
 3  「赦し主」と共同体

第3章 ふたつの赦しなき世界――『ドン・ジョヴァンニ』と『コジ・ファン・トゥッテ』
 1  愛の無差別主義者たち
 2  赦しを拒絶する自由――『ドン・ジョヴァンニ』
 3  不完全なものとしての平等――『コジ・ファン・トゥッテ』

第4章 無差別な慈悲の残酷――『皇帝ティートの慈悲』
 1  一七九一年のオペラ・セリア
 2  無差別主義的な慈悲――『皇帝ティートの慈悲』第一幕
 3  重唱に加わる皇帝――『皇帝ティートの慈悲』第二幕

第5章 慈悲のポリティクスからの自由――『魔笛』
 1  無力な王子――タミーノの物語
 2  復讐者と赦し主の系譜――夜の女王とザラストロ
 3  慈悲の共同体からの自由――パミーナの物語

文 献
解 説――残酷な赦し、愛の二重性、そして、慈悲のポリティクスからの自由……………大澤真幸
あとがき
奥村 隆(おくむら たかし)
1961年生まれ。関西学院大学社会学部教授。著書に『他者といる技法──コミュニケーションの社会学』(日本評論社、1998年)、『エリアス・暴力への問い』(勁草書房、2001年)、『反コミュニケーション』(弘文堂、2013年)、『社会学の歴史Ⅰ──社会という謎の系譜』(有斐閣、2014年)、『社会はどこにあるか──根源性の社会学』(ミネルヴァ書房、2017年)、『反転と残余──〈社会の他者〉としての社会学者』(弘文堂、2018年)など。
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