世界 2022年6月号

【特集1】核軍縮というリアリティ【特集2】批判的野党がなぜ必要か

世界 2022年6月号
ジャンル 雑誌 > 世界 > 定期号
刊行日 2022/05/07
体裁 296頁
【特集1】核軍縮というリアリティ
核戦争という悪夢は過去のものになった――私たちはそう考えていなかったか。ロシアによるウクライナ侵攻は、21世紀にむき出しの侵略などという暴挙は起きないという楽観的な思い込みを、いともたやすく裏切った。この次に発生する見込み違いは、人類を破滅の淵に追いやりかねない。核大国が核の威迫をもって侵略を進める現在の事態に、戦争被爆国の元首相が「核共有」に言及し、コメンテーターが「タブーなき議論」を呼びかけるなど、核軍拡につながるような反射的言説も少なくない。一方、この流れを反転させるための努力も続く。核兵器禁止条約の第1回締約国会議が6月に、つづいて核兵器不拡散条約の運用検討会議が8月に、それぞれ開催される。現在の危機を乗り越え、核軍縮/核廃絶への歩みを再起動させるために、私たちにできることは何か。特集する。

【特集2】批判的野党がなぜ必要か
権力はしばしば腐敗し、濫用される。誤りも犯す。しかし、専制国家とは異なり、民主主義の国においては、選挙を通じて市民が為政者を交代させることができる。この民主主義のシステムは、政府与党の問題点を明るみに出して批判し、政権交代を担える野党の存在なくして、機能しない。先の衆議院選挙で野党第一党の立憲民主党が予想外の敗北を喫して以来、野党がふらついている。新たな立憲民主党の代表は「提案型野党」を標榜し、国民民主党は政権の提出した当初予算に賛成、日本維新の会はしばしば与党と共同歩調をとる。このままでは、政権に脅威を与え、政治に緊張感をもたらす野党の存在が消えてしまいかねない。その先にどのような政治的光景が広がるのか。「野党」の存在理由とは何か。「批判ばかり」の野党の何がいけないのか。いま野党は何をすべきなのか。参議院選挙を前に、掘り下げる。
┏━━━┓
┃特集1┃核軍縮というリアリティ
┗━━━╋…────────────────────────────────

〈逆流に抗して〉
核軍縮の必要と必然――困難な道のりをどう進むか
中満 泉(国連事務次長)

〈廃絶へ前進を〉
核兵器禁止条約という現実的選択――日本は締約国会議に参加せよ
川崎 哲(ICAN)

〈アメリカ核戦略を読む〉
核カオスの深淵――プーチンの核恫喝とバイデンの新核戦略
太田昌克(共同通信)

〈核の威嚇との対峙〉
巨大リスクが可視化した世界――「プーチン危機」後の核軍縮
吉田文彦(長崎大学)

┏━━━┓
┃特集2┃批判的野党がなぜ必要か
┗━━━╋…────────────────────────────────

〈民主政治における機能〉
「野党の役割」とは何か
吉田 徹(同志社大学)

〈対談〉
リベラル政党の「可能性」と「不可能性」
杉田 敦(法政大学)×齋藤純一(早稲田大学)

〈インタビュー〉
野党がジェンダーで「勝つ」ために――政治家に求められる発信を考える
太田啓子(弁護士)

〈予算賛成の深層〉
分断される野党――自民党の執念と旧民主党系の混迷
川上高志(共同通信)

〈「連合」の行方〉
批判的労働運動の政治的使命
篠田 徹(早稲田大学)

〈批判的な議論とは〉
「批判する」とはどういうことか――ある現代哲学の視点から
小河原 誠(哲学者)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆注目記事
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

〈異なる視角から〉
旧ソ連の軛――ウクライナ戦争と中央アジア
地田徹朗(名古屋外国語大学)

〈EUの混迷と模索〉
エネルギー危機のヨーロッパ――ウクライナ侵攻と脱炭素政策の行方
ミランダ・シュラーズ(ミュンヘン工科大学)、訳=幾島幸子

〈脳力のレッスン特別篇〉
ウクライナ危機とロシアの本質(1)
寺島実郎

〈現代文明の本質〉
「新しい資本主義」とはなにか――レント資本主義と『資本論』の射程
佐々木隆治(立教大学)

〈何が問題か?〉
デジタル日本 その政策形成における課題
若江雅子(読売新聞)

〈好評連載〉
デジタル・デモクラシー 第6回――監視広告を駆逐せよ
内田聖子(PARC)

〈短期連載〉
生きる現場からの憲法 第2回――「戦争」と「女性」を地域から問う
大門正克(早稲田大学特任教授)

〈中間総括〉
新型コロナ対策の妥当性を問う――特措法制定の当事者として
岡田晴恵(白鷗大学)、田代眞人(元国立感染症研究所)

〈ウィル・スミス平手打ち事件〉
ジェイダ・ピンケット・スミスは〈冗談を笑って受け流す〉必要はない。そう、あなたも。
ロクサーヌ・ゲイ(作家)、訳・解説=KANA

〈好評対談〉
人新世の環境学へ 第2回(完)――なぜいまカール・マルクスなのか?
宮本憲一(大阪市立大学名誉教授)×斎藤幸平(東京大学)、聞き手=佐々木実、解説=加藤正文

〈最終回〉
ルーツを巡る旅、ヘイトに抗う道 第4回(最終回)――未来に差別を引き継がぬために
安田菜津紀(ジャーナリスト)

〈新連載〉
気候再生のために 第1回――気候変動科学論争の現在地
江守正多(国立環境研究所)

〈時代の記録〉
読者投稿 コロナ禍を生きる(下)
北原潤希・松田奈津子・髙山和彦

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇SEKAI Review of Books
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◇読書の要諦――文芸 草木国土阿鼻地獄
藤沢 周(小説家)

◇新刊紹介

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇世界の潮
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◇ヤジと憲法――北海道警ヤジ排除問題
山﨑裕侍

◇アフガニスタンに迫る人道危機――ウクライナ戦争の陰で
登利谷正人

◇時の壁を破った高裁判決――優生保護法国賠訴訟
大橋由香子

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●連載
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●メディア批評【第174回】
神保太郎(ジャーナリスト)

●片山善博の「日本を診る」(151)――街路樹伐採をめぐる混乱から地方議会の役割を再確認する
片山善博(大正大学)

●但馬日記【第37回】
地域コミュニティ再考――「しがらみ」のアップデートへ
平田オリザ(劇作家)

●いま、この惑星で起きていること【第30回】
考える葦と温暖化
森さやか(気象予報士)

●沖縄(シマ)という窓――大和の世からアメリカ世、ひるまさ変わたるこの沖縄
親川志奈子(沖縄大学非常勤講師)

●原発月報――(22・2~4)
福島原発事故記録チーム

●ドキュメント激動の南北朝鮮(298)(22・3~4)
編集部

●民話採光
阿部海太(絵描き・絵本描き)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

○読者投句・岩波俳句
選・文=池田澄子(俳人)

○アムネスティ通信

○読者談話室

○デザイン
赤崎正一 + 佐野裕哉 (協力=国府台さくら)
ページトップへ戻る