編集部だより




  葛野浩昭著『サンタクロースの大旅行』
(1998年刊 新赤版591)


 この文章が掲載される頃には、町のあちこちに「この人」が出没しているのではないでしょうか? この文章を書いている、12月半ば現在、私の家の近所のコンビニでは、すでに「この人」がレジ打ちをしています。

 「この人」とは。そう、サンタクロースです。この時期に、ぜひおすすめしたい新書が葛野浩昭著『サンタクロースの大旅行』です。これは、サンタクロースについて研究した、楽しい本です。サンタクロースはいつ、どうやって誕生したのか? サンタクロースのモデルは? なぜ赤い服を着ているのか? これほどまでに普及したのはなぜか? 日本にはいつ来たのか? こうした多くの疑問が、本書の中で解き明かされます。

 本書に紹介されているおもしろいエピソードをご紹介します。サンタクロースはトナカイが引くソリに乗っています。しかし、どうも最初からトナカイではなかったようです。トナカイの代わりに活躍する動物とは? 実は豚なのです。実際に、本書では、サンタクロースのソリを豚が引いている絵(1941年のフィンランドのクリスマス・カード)や、豚を抱えて登場するサンタクロースの絵(1921年のフィンランドのクリスマス・カード)が掲載されています。

 もうひとつ。日本最初のサンタクロースについても、おもしろい話が紹介されています。明治7(1874)年、外国人居留地にあった女学校で、原胤昭(はら・たねあき)が開いたクリスマス祭に登場したのが、日本初のサンタクロースのようです。そこに現れたサンタクロースとは、裃をつけて、カツラをかぶった、どうみても殿様という出で立ちであったとのこと。

 本書を読めば、普段、私たちが知っているものとは、まったく違ったサンタクロース像が浮かびあがってきます。サンタクロースの中にこめられた歴史的、文化的な面の奥深さに驚くことと思います。子どもの時に多くの人が抱いた疑問。サンタクロースはいるのか、いないのか。サンタクロースは、しっかりと存在しつづけているようです。
(新書編集部 田中宏幸)
 
     
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