編集部だより


5月の新刊




  パレスチナ 新版
広河隆一著
(新赤版784)
 

     
   ここ数か月、報道に接しない日はない、パレスチナとイスラエルの衝突。イスラエルは軍を撤退させたものの、国連調査団の派遣は断固拒否していますし、パレスチナ側も、自爆テロなどを自治政府が本当に止めさせることができるのか、先の見えない対立を暗澹たる気持ちで見ている方も多いのではないでしょうか。

 しかし、この対立がいつ始まり、どういう経過を経て今日まで続いているのか、私たちはどの程度理解しているでしょうか。むしろ多くの方は、なぜ双方ともこのような行動をとるのか、という疑問の方が大きいのではないでしょうか。

 パレスチナとイスラエルの問題は、旧約聖書の時代以来の宗教的・民族的確執であり、一見第三者には立ち入れないことのように思われるものの、その現代史を辿れば欧米の植民地主義や世界大戦、アメリカの対中東政策等、時代の国際情勢と決して無縁ではありませんでした。第1、2章では、19世紀末から今春の現地取材による最新の状況まで、この問題の変遷を時代を追って語っていきます。
 また、イスラエルはユダヤ人によって建国された国ですが、すべての国民がユダヤ教の下に団結しているわけではないようです。そもそも「ユダヤ人」「パレスチナ人」の定義とは何なのでしょう。第3章では、近年のイスラエル国内における自らのアイデンティティ論争の紹介やパレスチナ難民の状況、三大宗教の聖地エルサレムの問題等々、理解を深めるためのポイントを、「視点」として紹介します。

 30年以上にわたって現地に通い続け、この問題を追ってきた著者ならではの、体験もふくめた記述から、問題の輪郭をつかんで頂ければと思っています。
(編集部 広田祐子)
 
     
  ▲ベツレヘムに侵攻したイスラエル軍戦車に投石するパレスチナの青年(2001年10月)    ▲イスラエル軍の攻撃で瓦礫の山となったジェニン難民キャンプ(2002年4月)  
     
  ■著者紹介
広河隆一 ひろかわ・りゅういち
 1943年生まれ。67年早稲田大学卒業。同年イスラエルに渡り、キブツでの研修等を経て70年に帰国。以後現在まで、中東諸国と核問題を中心にフォト・ジャーナリストとして取材を続ける。IOJ国際報道写真大賞、講談社出版文化賞、日本ジャーナリスト会議特別賞、平和・共同ジャーナリスト基金賞など受賞多数。「チェルノブイリ子ども基金」の代表でもある。
 著書は『ユダヤ国家とアラブゲリラ』『パレスチナ難民キャンプの瓦礫の中で』(草思社)、『日本のエイズ』(徳間書店)、『破断層』『チェルノブイリの真実』『原発被曝』(講談社)など多数、写真集は『パレスチナ』(徳間書店)、『チェルノブイリと地球』(講談社)、『人間の戦場』(新潮社)、『チェルノブイリ 消えた458の村』(日本図書センター)などがある。
 ホームページ:http://www.hiropress.net
 
     
  ■目次
序 パレスチナとの出会い ― 新版刊行にあたって
第1章 イスラエル建国から占領へ
 1 「約束の地」の受難者たち ― 第二次世界大戦以前
 2 奪われる土地、生まれる難民 ― 国連決議とイスラエル建国
 3 戦火の日々 ― 占領、弾圧、そして抵抗
 4 キャンプに築かれたもの ― レバノン内戦とPLO再建
 5 大虐殺の現場で ― レバノン戦争とベイルート事件
 6 PLOの険しい途 ― 飢餓と包囲のなかで
第2章 和平への模索と挫折
 1 インティファーダ(民衆蜂起) ― 抵抗と犠牲
 2 共存への模索 ― 和平へ向かった背景
 3 暫定自治協定の衝撃 ― 怒りと喜びのあいだで
 4 ラビンの死 ― 和平挫折の危機
 5 和平の崩壊 ― シャロンの戦争
 6 新しい戦争 ― 2002年2−4月
第3章 視  点
 1 ユダヤ人 ― 民族か、宗教か
 2 パレスチナ人 ― 難民、イスラエル国民
 3 占領地 ― 対立と分断
 あとがき
パレスチナ問題関連年表
索 引

 
  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
中東現代史 藤村 信著 新赤版515
イスラームと国際政治 ― 歴史から読む 山内昌之著 新赤版583
ユダヤ人 J-P.サルトル著 安堂信也訳
  青版B-79
 
 
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