編集部だより


10月の新刊




  裁判官はなぜ誤るのか
秋山賢三著
(新赤版809)
 

     
   著者は、裁判官として20年以上の経験を積んだあと、弁護士に転身しました。弁護士としてはじめて法廷に出た時に感じたのは、「壇が高いなあ」ということだったそうです。壇とは、裁判官の席のある「法壇」のこと。こうして著者は、裁判官席の高みからは、見えるものと見えないものがあることに気がついていきます。

 本書の前半は、その眼で振り返った率直な裁判官生活の回顧です。常時300件(!)を抱える過密な日常と、60年代から始まった司法の硬直化の中で、「疑わしきは被告人の利益に」という裁判の大原則を貫くことが、ますます困難になっていくのではないか……体験に基づいて、キャリア裁判官システムの問題点が明らかにされます。

 後半では、弁護士として取り組んでいる事件の検討から、誤判・冤罪を生まないために、裁判官や裁判制度はどうあるべきかを考えます。司法改革が求められている現在、法曹一元化、参審制、ロースクールなどの改革構想についても、やはり「疑わしきは被告人の利益に」の原則に照らして吟味する必要がある、というのが著者の一貫した主張です。
(編集部 早坂ノゾミ)
 
     
  ■著者紹介
秋山賢三(あきやま けんぞう)さんは1940年、香川県の生まれ。
1965年に東京大学法学部卒業後、1967年、判事補に任官、その後、各地で判事として勤務、徳島地裁では、「ラジオ商殺し」事件の冨士茂子さんの再審決定にかかわる。1991年に依願退官し、弁護士登録(東京弁護士会)。現在は日本弁護士連合会人権擁護委員、袴田事件等再審弁護団、全国痴漢冤罪合同弁護団団長、長崎事件弁護団団長などをつとめる。
 著書に『民衆司法と刑事法学』(編著、現代人文社、1999年)。
 
     
  ■目次
はじめに

第一章 裁判所と裁判官の生活
1 裁判官と市民との間
2 裁判官の選任・養成システムと仕事
3 「生活者」としての裁判官

第二章 刑事担当の裁判官として
1 法曹への志
2 任官のころ――人権擁護・民主主義の志
3 刑事裁判官の立場と悩み
4 弁護士としての人権擁護活動

第三章 再審請求を審理する――徳島ラジオ商殺し事件
1 捜査の展開と起訴、そして判決
2 再審請求
3 冨士茂子さん再審事件から学ぶもの

第四章 証拠の評価と裁判官――袴田再審請求事件

1 「見込み捜査」とマスコミ
2 公判過程の疑問点
3 確定判決と自白調書への疑問
4 再審請求審での新証拠

第五章 「犯罪事実の認定」とは何か――長崎(痴漢冤罪)事件
1 長崎事件について
2 有罪判決の論理と問題点
3 「痴漢冤罪」はなぜ起こるのか
4 最近の危険な裁判傾向

第六章 裁判官はなぜ誤るのか
1 「裁判上証明されるべき事実」とは何か
2 構造的な誤判・冤罪
3 「疑わしきは被告人の利益に」への模索
4 裁判所はどうあるべきか
5 市民に開放された司法は実現できるか
6 職業裁判官に対する十戒――ささやかなる提言

おわりに


 
  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
自白の心理学  浜田寿美男著 新赤版721
法とは何か 新版  渡辺洋三著 新赤版544
日本人の法意識  川島武宜著 青版A43
法廷のなかの人生  佐木隆三著 新赤版487
日本の刑務所  菊田幸一著 新赤版794
 
 
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