編集部だより


9月の新刊




  絵のある人生 ―見る楽しみ、描く喜び―
安野光雅著
(新赤版856)
 

     
  絵を見る、楽しむ、描いてみる

 あなたは、絵がお好きですか? 実は私自身は、ふだん、画集を買ったり美術館に出かけたりすることのほとんどない人間です。
 ところが、たまたま縁あって、国際的にも知られる画家・安野光雅さんの本を担当することになりました。1年ほど前のことです。当然ながら、それからしばしばお会いし、時には何時間もお話をうかがってきました。そして、いま――

 いま、私は、自信を持ってこう言えます。「たった1度の人生に、〈絵〉とのつきあいを組み入れないなんて、なんともったいないことか」と。街の画廊をふらっとのぞいてみる。画家たちの格闘がつづられた本を読む。思い切って画材を買い揃え、描きたいものを描いてみる……。そんな楽しみを知らずにすませてよいものか?

 実は、そういう問いを、ほかならぬ安野さんもまた――もちろん、私と違い、豊かなご自身の経験の上に立って、ですが――しばらく前から胸の内に抱えていたようです。編集部が投げかけた「絵のある人生」というタイトルがその問いに火をつけたと見え、自ら「万巻の書が書ける気になった」と言ってくださったのです。

 実際、この本の執筆は、トントン拍子に進みました。ご自身の絵とのかかわり、特にお好きなブリューゲルの傑作の生まれる過程、そしてゴッホの恵まれぬ生涯への思い……。明暗も濃淡も含めて、色彩感ゆたかに話は広がっていきます。

 中でも特筆すべきは、最後に収められた具体的な指南。これから初めて絵を描いてみようと思い立った読者のために、絵筆、紙、絵の具などについて、ていねいな説明をするだけでなく、実際に花瓶に入れた花を描いていく手ほどきまでしてくださるのです。

 この本を読み終える時、きっと誰もが決意するに違いありません。よし、私も1枚描いてみよう、と。何しろ、安野さんは「テクニックは重要な問題ではない。描きたいという意欲が、何より大切」と言ってくださっているのですから。
(新書編集部 坂巻克巳)
 
 
     
 

■著者紹介
安野光雅(あんの・みつまさ)
1926年生まれ。山口師範学校研究科修了。小学校教員を経て、画家。著書に『ふしぎなえ』(福音館書店)、『ABCの本』(同)、『安野光雅文集(1〜6)』(筑摩書房)、『絵のまよい道』(朝日新聞社)、『故郷へ帰る道』(岩波書店)ほか。

 
     
 

■目次
1 絵を見る――心を動かされる満ち足りた時間
2 絵を描く――ブリューゲルの作品を手がかりに
3 絵に生きる――ゴッホの場合、印象派の時代
4 絵を素直に――ナイーヴ派、アマチュアリズムの誇り
5 絵が分からない――抽象絵画を見る眼
6 絵を始める人のために――テクニックは重要な問題ではない
7 絵のある人生
 あとがき

 
     
  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
日本絵画のあそび 榊原 悟著 新赤版574
イギリス美術 高橋裕子著 新赤版555
水墨画 矢代幸雄著 青版E-70
名画を見る眼(正続) 高階秀爾著 青版E-64・65
ギリシアの美術
澤柳大五郎著 青版E-62
 
 
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