編集部だより


11月の新刊




  横書き登場 ―日本語表記の近代
屋名池 誠著
(新赤版863)
 

     
   本を読む、新聞を読む、メモをとる、手紙を書く。ふだん何気なくしていることですが、そのときどの方向に向かって文字を追っているか――これを「書字方向」といいます。本書はその書字方向に注目して、いかにして日本語に横書きが登場し、使われるようになったかを精緻に検証していく、異色の近代日本語史です。

 今、私たちは、右から左へと行が移っていく縦書きと、左から書く横書きとをあわせて使っています。この使い方が定着したのはいつ頃からなのでしょうか。「日本古来の横書きは右から書く」「左横書きは戦後、国の政策として行なわれた」等々の「常識」が頭に浮かんできませんか? 実はこれらは「現代の伝説」に過ぎなかったのです。

 それらを実証する、系統的な調査にもとづく資料は、浮世絵、蘭学書、明治にはいっての新聞、雑誌から電車の切符、切手、教科書等々にまで至る膨大なもの。事実によって「常識」がくつがえされ、新たに「横書き登場」のプロセスが浮かび上がってくるところは、まるで推理小説のようにスリリングです。

 本書は2001年7月から翌年8月まで『図書』で連載され、大変好評だった「縦書き・横書きの日本語史」の前半部分を全面的に書き改めたものです。改稿の過程で、さらに多くの調査結果が加わり、過去・現在・将来の日本語表記のあり方を見通したものとなりました。
(新書編集部 早坂ノゾミ)
 
 
     
  ■著者紹介
屋名池 誠(やないけ・まこと)氏は1957年東京生まれ。
1985年東京大学大学院博士課程中退、現在は東京女子大学現代文化学部教授。
専攻は日本語学。著書に『大阪女子大学蔵 蘭学英学資料選』(共著、同大学附属図書館)『上方ことばの今昔』(共著、和泉書院)がある。
 
     
 

■目次

 
   はじめに――なにが問題なのか

第1章 世界の中の縦書き・横書き

第2章 横書き以前

第3章 古代の「横書き」

第4章 横文字流行

第5章 右横書き登場

第6章 左横書き前夜

第7章 左横書き登場

第8章 横書きという事件

第9章 左横書き――新たな用途

第10章 右横書き――新たな用途

第11章 横書きを使う人々

第12章 「書字方向スタイル」

第13章 走る横書き

第14章 横書き専用の文字体系――速記と点字

第15章 二大スタイルの時代

第16章 数を書く

第17章 折衷の時代

第18章 「左横書き専用」の光と影

第19章 右か左か

第20章 横書きの戦後

第21章 縦書き・横書きの現在と将来

第22章 近代日本語の書字方向の流れ

第23章 空間の中の時間

 おわりに
 
 主要資料
 主要先行研究
 図版出典一覧
 
     
  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
日本語はどう変わるか ― 語彙と文字 樺島忠夫著 黄版145
日本語 新版(上) (下)
金田一春彦著 新赤版2・3
日本語の文法を考える 大野 晋著 黄版53
ことば散策 山田俊雄著 新赤版628
日本語はおもしろい
柴田 武著 新赤版373
 
 
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