編集部だより






  働きすぎの時代
森岡孝二著
(新赤版963)

 
 
 

 いま、正社員もフリーターも働きすぎで悲鳴を上げている。

■著者からのメッセージ
 6月中旬の土曜日、学会主張のついでに岩波書店に立ち寄り、本書の編集について打ち合わせをした。そのなかで「働きすぎ」に関連して、書店のアマゾンが「一分一秒の世界」だという話を聞いた。

 帰宅後、ネットで検索し、アマゾンの巨大な物流センターでは、時給900円で注文された本を「一分に三冊」のノルマでひたすら探し回るという新聞記事を探し出した。翌日曜未明、アマゾンに先の記事に出ていた本を注文した。すると「二四時間以内に配達する」という触れ込みどおり、月曜の午前中には家に届いた。送り元は千葉県、家は大阪府。この間600キロを宅配便はひたすら走ったのだろうか。

 アマゾンや宅配便のことは他人事ではない。今この国では正社員もフリーターも働きすぎで悲鳴を上げている。

 本書では、さまざまな職場の過重労働の実態を掘り下げ、世界に広がる働きすぎの原因に迫る。そして、まっとうな働き方ができる社会を創っていくために、いま何が必要なのかを提起する。

 
 
 

■著者紹介
森岡孝二(もりおか・こうじ)1944年大分県生まれ。関西大学経済学部教授。株主オンブズマン代表。専門は、株式会社論、企業社会論、労働時間論。香川大学経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科博士課程退学。83年4月以降、現職。経済学博士。 著書は、『独占資本主義の解明』『企業中心社会の時間構造』『日本経済の選択』『粉飾決算』など多数。訳書に『働きすぎのアメリカ人』『浪費するアメリカ人』 『窒息するオフィス 仕事に強迫されるアメリカ人など。趣味はバード・ウォッチング。

◆著者ホームページ
◆雇用・労働・労働時間関連サイト
◆中央労働災害防止協会による「労働者の疲労蓄積度チェックリスト」

 
     
  ■目次

 
  序 章 働きすぎの悲鳴が聞こえる  
  「過労死診断コンピュータ」、働きすぎでダウン/こんなことがあっていいでしょうか/契約社員もパートも働きすぎ/病院で人間らしい時間を取り戻す/「過労死一一〇番」と増える過労死の労災認定/好んでサービス残業をしているのではありません/「もっと働け日本人」/高度資本主義が生む働きすぎの時代
  第一章 世界に広がる働きすぎ―グローバル資本主義の逆流―  
  時短の時代から働きすぎの時代へ/働きすぎのアメリカ人/カップル労働時間の増大とタイム・デバイドの広がり/ホワイトカラーの職場も「搾取工場」に/株価至上主義経営も働きすぎの一因/イギリスでも働きすぎと過労死が問題に/ドイツでは労働時間の延長について労使の合意が広がる/フランスでも週三五時間制を見直す動きが強まる/労働時間をめぐる国際的な綱引き/労働時間をめぐるグローバル競争
  第二章 家庭も出先も職場になった―情報資本主義の衝撃―  
  情報通信革命は仕事を増やし、労働時間を長くした/産業革命でも似たようなことが起きた/マクドナルドはコンピュータの申し子/今日のハイテク企業とアウトソーシングの拡大/日本でもみられる情報化にともなう非正規雇用の多用/「ユビキタスネットワーク」の時代へ/携帯電話・Eメール大好きの日本の大学生/情報ツールで家庭も出先も職場になった/「ロマンチックな夜も台無しに」/テクノストレス――不安症と依存症/「残業当たり前」「休みも仕事」「うつ病急増」のソフト開発現場
  第三章 消費が変える雇用と労働―消費資本主義の罠―  
  消費資本主義の誕生/消費競争と「ワーク・アンド・スペンド・サイクル」/消費主義は浪費的で環境にも有害/「すばらしい取引の時代」/仕事はきつく、雇用は不安定に/コンビニエンス・ストアと深夜営業/宅配便の利便性と過重労働/ネット消費の急成長を支える労働の世界/スピードを売るバイシクル・メッセンジャー/学生アルバイトと消費資本主義
  第四章 労働の規制緩和と二極分化―フリーター資本主義の大波―  
  新自由主義と市場個人主義/労働の規制緩和と人材ビジネス/「ホワイトカラー・エグゼンプション」制導入論のねらい/労働時間の概念も残業の概念もなくなる?/進む雇用形態の多様化と雇用の不安定化/雇用形態の多様化と所得の二極分化/労働時間も二極分化が進む/もっとも働きすぎは三〇代男性――四人に一人が週六〇時間以上/動き始めたサービス残業の是正/時短促進法を廃止し、年間一八〇〇時間の旗を降ろす/労働時間の個人化とは/「自発的な働きすぎ」をどう考えるか/最高裁の判決にみる使用者の健康配慮義務
  第五章 労働基準とライフスタイル  
 

労働時間の歴史を振り返る/労働時間の制限と短縮の歩み/ILOの労働基準と日本の労働基準法/労働基準法をザル法にさせている三六協定/アメリカの「ワーク・ライフ・バランス」/イギリスの「ワーク・ライフ・バランス・キャンペーン」/労働時間はライフスタイル/パート時給改革とオランダ・モデル/日本の男女の時間格差と収入力格差/アメリカで増えている減速生活者(ダウンシフター)/日本におけるライフスタイル転換のさまざまな動き/菜園家族レボリューション/ライフスタイル運動もビジネスになる?

  終 章 働きすぎにブレーキをかける  
 

食事や睡眠や家庭生活はこれでよいのか/働きすぎで近所付き合いも政治参加も困難に/働きすぎは危険がいっぱい/長時間過密労働は交通事故を誘発する/仕事のストレスで増えるうつ病/働きすぎにブレーキをかける/労働時間を短縮し、過重労働をなくすために―働きすぎ防止の指針と対策

 

あとがき
参考文献
雇用・労働・労働時間関連サイト一覧
全国労働局・労働基準監督署一覧

 

  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
ルポ 解雇―この国でいま起きていること 島本慈子著 新赤版859
リストラとワークシェアリング 熊沢 誠著 新赤版834
豊かさの条件 暉峻淑子著 新赤版836
人間回復の経済学 神野直彦著 新赤版782
過労自殺
川人 博著 新赤版553
 
 
 



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