編集部だより






 

建築紛争―行政・司法の崩壊現場
五十嵐敬喜・小川明雄著
(新赤版1053)

 
 
 

 突然、隣の空き地に建築の掲示板が掲げられたかと思いきや、猛スピードで工事が進められ、あっという間に10階建ての高層マンションが完成してしまった。おかげで日当たりは悪くなるし、落ち着いた雰囲気だった街の景観もすっかり壊された。ここは2階建ての一軒家が立ち並ぶ静かな住宅街だったというのに……。

 こうした「高層マンション問題」に、多くの住民が悩まされています。どうしてこんなことが起きるのか、その構図を探ってみると、意外なことに、昨年来、全国を震撼させている「耐震強度偽装事件」の背景と共通していることが浮かび上がってきます。両者をつなぐ鍵は、建築法制の規制緩和。政官財が一体となって、やみくもにそれを推し進めた構図があるのです。また、問題を抱えた住民が裁判所に駆け込んでも、まったく頼りになりません。本書では、「街壊し」がどうして止まらないのか、その本当のわけを数々の事例をもとに考えながら、「美しい都市」を保全する方策を提案してゆきます。

 都市法を専門とする研究者で弁護士の五十嵐さんと、ジャーナリストの小川さんによる共著書は、本書で7冊目です。日本型システムの暗部に市民的な視点でせまる好評シリーズです。

(新書編集部 小田野耕明)
 
 
 

■著者紹介
五十嵐敬喜(いがらし・たかよし)
1944年生まれ。早稲田大学法学部卒業。法政大学教授・弁護士。単著に『美しい都市と祈り』『美しい都市をつくる権利』『市民の憲法』などがある。
小川明雄(おがわ・あきお)
1938年生まれ。東京学芸大学英語科卒業。AP通信、朝日新聞社を経て、現在は、ジャーナリスト。単著に『日本崩壊』『日本錯乱』(筆名・御堂地章)などがある。
 二人の共著として、『都市計画 利権の構図を超えて 『議会 官僚支配を超えて『公共事業をどうするか』市民版 行政改革』 『「都市再生」を問う』(以上、岩波新書)、『公共事業は止まるか』(共編著、岩波新書)などがある。

     
  ■目次
 読者へ――まえがきに代えて

 
 
第1章
日本が危ない――耐震強度偽装問題の構図  
   
 
第2章
数の偽装――住宅地にそびえ立つ高層マンション  
   
 
第3章
「官から民へ」の落とし穴――建築法制の崩壊  
   
 
第4章
プレーヤーたち――政官財、マスメディア、そして米国  
   
 
第5章
裁かれる裁判官――「良心」を忘れた司法  
   
 
第6章
美しいまちへ――問われる市民  
   
   読者へ――あとがきに代えて  

  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
都市計画 利権の構図を超えて 五十嵐敬喜・小川明雄著 新赤版294
公共事業をどうするか 五十嵐敬喜・小川明雄著 新赤版492
公共事業は止まるか 五十嵐敬喜・小川明雄編 新赤版717
「都市再生」を問う―建築無制限時代の到来 五十嵐敬喜・小川明雄著 新赤版832
まちづくりと景観
田村明著 新赤版985
 
 
 


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