編集部だより






 

アラビアンナイト
―文明のはざまに生まれた物語

西尾哲夫著
(新赤版1071)

 
 
 

 ほんとうは、千一夜なかった?―アラビアンナイト・クイズ

 「千一夜物語」または「千夜一夜物語」ともいわれ、今や世界文学としても有名なアラビアンナイト。子どもの頃には、誰もが一度は読んだり、話を聞かされたりしたことでしょう。でも、それがいつ頃、どのように出来上がったものなのか、本当にアラブのお話なのか、その起源は謎に包まれています。この本では、ヨーロッパに翻訳されるようになったいきさつ、その後のまぼろしの「原典」探し、「偽写本」の捏造、翻訳による違いなど、成立から現在にいたるまでの変貌の軌跡をたどります。

  さて、あなたは次のアラビアンナイトをめぐるクイズにYESかNOでどれだけ答えられるでしょうか? 回答は、本書を読めばわかりますが、目次の後にもあります。

Q1. 「アラジン」「シンドバッド」は、本来の「アラビアンナイト」とは別系統の物語である。
Q2. アラビアンナイトのヨーロッパでの最初の翻訳はラテン語で書かれていた。
Q3. アラビアンナイトは、百科全書派に影響を与えた。
Q4. 日本での翻訳「烈女之名誉」とは、アラビアンナイト中の「シャフリヤール王とシェヘラザードの物語」のことである。
Q5. 「アラビアンナイト」という題名は、英語訳に由来するもので、アラビア語の本来のタイトルは、「千一夜」という意味である。
Q6. ヨーロッパで最初に翻訳されたのは、日本でいえば文化・文政時代のことである。
Q7. シェヘラザードが最後にどうなったかは、写本によって違っていた。
Q8. アラビアンナイトは、昔からアラブ知識人にも高い評価を受けていた。
Q9. アラビアンナイトは、イスラム教の倫理観に反するとして、しばしば禁書にされた。
Q10. 最初に翻訳した写本には、千一夜分の物語は含まれていなかった。


(新書編集部 中西沢子)
 
 
 

 
▲シャフリヤールに物語を語るシェヘラザード(レオン・カレ画)
 
     
 

■著者紹介
西尾哲夫(にしお・てつお)
1958年香川県に生まれる
1987年京都大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士(京都大学)。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助手、同助教授を経て
現在―人間文化研究機構 国立民族学博物館教授、総合研究大学院大学教授
専攻―言語学、アラブ研究
著訳書―『図説 アラビアンナイト』(河出書房新社)、R. アーウィン『必携 アラビアンナイト―物語の迷宮へ』(平凡社)、『アラブ・イスラム社会の異人論』(世界思想社)ほか

     
  ■目次
 はじめに―中国人アラジン

 
 
第1章
アラビアンナイトの発見  
 

最初の翻訳者アントワーヌ・ガラン/外交使節の随員となる中東関係の変化/アラビアンナイトとの出あい/宮廷のベストセラーに/青本叢書、コーヒーハウス、チャップブック/拡大する読者層/東方小説の大流行/傑作の登場―『恋する悪魔』『ヴァテック』『サラゴサ手稿』/東方研究から中東支配の道案内へ/ナポレオンのエジプト遠征

 
第2章
まぼろしの千一夜を求めて  
 

本当は千一夜なかった?/古今東西の説話の宝庫/ガランの誤解/「アラジン」と「アリババ」はどこから?/ガランの小細工/さまざまなアラビアンナイト写本/ガラン版以後のアラビアンナイト写本/ガラン写本の続きはどこに―シャヴィ写本/アラジン写本の正体/まぼろしの写本を求めて/アラビアンナイト原典の印刷出版

 
第3章
新たな物語の誕生  
 

イギリスで出版された「アラビアンナイト・エンターテインメント」/児童文学としてのアラビアンナイト/スコット版―子供向けアラビアンナイトの底本/レイン版の登場―中東世界の学術的紹介/バートン版--好色文学としてのアラビアンナイト/ガランからバートンへ/もうひとつのバートン版―恐妻家バートン/マルドリュス版―世紀末の翻案版アラビアンナイト/児童文学としての定着/イギリス・ファンタジーへの影響/「自由の国」アメリカでの変容/アメリカでの「東方小説」―専制と自由の戦い

 
第4章
アラブ世界のアラビアンナイト  
 

インド・イランからアラブへ/アラブ文学の伝統--アラビアンナイトは非主流派だった/アラブ知識人による記録/アラビアンナイト以外の物語集/さまざまな『アラビアンナイト』/正統なアラビアンナイト写本はどこに?―シェヘラザードの運命/語り物芸の伝統/中東の語り物芸/アラビアンナイトとユダヤ人/近代アラブ世界の事情/現代アラブ文学とアラビアンナイト/民族文化としてのアラビアンナイト再生

 
第5章
日本人の中東幻想  
 

中東世界との出あい/江戸期の中東情報/幕末から明治へ/英語書籍の翻訳/明治期のアラビアンナイト翻訳事情/西洋情報と子女教育/巌谷小波とアラビアンナイト/バートン版の登場―大宅壮一によるグループ翻訳/マルドリュス版―戦前の発禁図書/森田草平のレイン版訳/アラビア語原典訳の登場

 
第6章
世界をつなぐアラビアンナイト  
 

挿絵による視覚化/パントマイムから芝居まで/オペラ、音楽、バレエ/映像によるファンタジー/日本映画とアラビアンナイト/少女歌劇--宝塚をめぐって/ホームエンターテインメント―電子ゲーム、漫画、アニメ/物語、登場人物のパーツ化/進化し続ける物語

 
終章
「オリエンタリズム」を超えて  
 

文明化される他者/アラビアンナイトとオリエンタリズム的文学空間/オリエントという他者を通した自己規定/アラビアンナイトと近代日本のオリエンタリズム

 

あとがき
文献ガイド
本書に登場する主な物語

 
     
 

(クイズの答え:Q1 ○ 、Q2 ×(フランス語)、Q3 ○ 、Q4 ×(「アリババと40人の盗賊」)、 Q5 ○ 、Q6 ×(元禄時代)、Q7 ○、 Q8 ×、 Q9 ○ 、Q10○)

 

  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
西遊記―トリック・ワールド探訪 中野美代子著 新赤版666
三国志演義
井波律子著 新赤版348
グリム童話の世界―ヨーロッパ文化の深層へ 高橋義人著 新赤版1041
魔法ファンタジーの世界 脇明子著 新赤版1020
ロビン・フッド物語
上野美子著 新赤版564
 
 
 


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