あの「事件」から35年―いま、全貌が白日の下に!
この本をつくる過程で、私はちょっと珍しい経験をしました。校正刷り(ゲラ)を3度も読んだのです。
ふつう私たち編集者は、担当する本のゲラを2回読みます。初校ゲラと再校ゲラ。最終段階の三校ゲラは、再校での修正箇所だけをチェックする程度なのです。
けれど、この『沖縄密約』の場合、その三校もじっくり読み通したのでした。どうして、ですって? ずばり、あまりに面白いからなのです。
それはそうです。あの「沖縄の施政権返還」という重大な外交交渉の裏側で、日米両国がそれぞれの「国益」をかけた駆け引きを重ね、核持ち込みの可能性や、日本側の巨額(2億ドル以上)負担の密約がかわされた経緯が具体的に明かされるのですから、面白くないわけがありませんね。
その密約を国民に隠すために、日本政府がどんな(著者いうところの)「情報犯罪」を犯したのか――それを検証する本書は、まるで手に汗握るサスペンスのような興奮を与えずにはおきません。しかもフィクションではないのですから、読む者に与えるその戦慄は、小説以上だといってよいでしょう。
著者・西山太吉氏は、35年前の「外務省機密漏洩事件」――この呼称そのものが実はクセモノで、本来は「沖縄密約事件」なのですが――の当事者。「西山事件」と記憶している方も多いでしょう。その西山氏が、この数年、次々に公表・報道されたアメリカ政府の秘密文書や当時の日本側交渉責任者の証言、そのほか数々の資料を駆使して、この壮大な「国家犯罪」の全体像に迫ったのです。
しかも、これは決して遠い過去の事件ではありません。今日なお続いている「犯罪」なのです。2326億円(2006年度)にも及ぶ「思いやり予算」(日本が負担する在日米軍駐留経費)の起点として、またこれから始まる沖縄・米海兵隊のグアム移転にからむ巨額日本負担との関連において、さらには明白な証拠の続出にもかかわらず、政府が密約の存在を認めないままだという意味において……。
ちなみに、最近「読売新聞」の社説(2007年3月28日付)も、こう書きました。「『密約』の存在をいまだに否定し続ける政府の姿勢は、ちょっとおかしいのではないか」――これは、多くの人の共有する思いでしょう。
かつてメディアによる異常なバッシングの中でペンを折り、30年余りも「氷河期のよう」(西山氏、「朝日新聞」2005年5月15日付)な日々を生きた「運命の人」(「文藝春秋」連載中の、西山氏をモデルとする山崎豊子作の小説タイトル)が、満を持していま世に問う初の著書。ぜひ、お読み下さい。
(新書編集部 坂巻克巳)
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