人間は言語をつくることができるか
今からほぼ120年前、1887年のこと、ポーランド(当時はロシア領)に住むルドヴィーコ・ザメンホフという名のユダヤ人が、国際共用語として新しい言語を考案し、発表しました。その名はエスペラント――「希望の言語」という意味を込めた命名でした。
しかしその後、エスペラントの歩んだ道のりは険しいものでした。政治的には国家の枠を超える思想につながる「危険な言語」として、ナチス・ドイツやスターリン主義の弾圧を受けたのですが、それだけではありません。正統派言語学者たちの言語観からするならば、「人工言語」は本質的に異端の言語としてのみ存在しうるものだった――そう著者は述べています。
では、エスペラントとはいったいどんな言語なのでしょう。本書は簡単な文法のスケッチからはじまって、エスペラントが生まれ故郷のヨーロッパのみではなく、むしろアジアで熱心に受け容れられたのはなぜなのか、便利なコミュニケーションの道具というだけではなく、宮沢賢治のような詩人たちの魂をゆすぶることができたのはどうしてか、と多面的にこの言語に迫ってゆきます。
そして、縦横無尽、博覧強記の叙述の行き着くところ、「言語は人類にとっていかなる意味をもつか」という大問題が立ち上がってくるのです。
おりしも2007年8月には、横浜で世界エスペラント大会が開かれ、世界中のエスペランチストが日本に集まってきます。世界はもはや英語を中心にまわる
しかないと考える方も、いやそれはどうかと疑問を呈する方も、この機会にエスペラントに興味を持っていただければと思います。
(新書編集部 早坂ノゾミ)
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