■著者からのメッセージ
ウナギという魚の名前を聞いて、皆さんは何を思い起こされるでしょうか。街角のウナギ屋さんの店先から漂うかぐわしい蒲焼きの香。小川やお祭りでのウナギ釣り。最近ではコンビニエンスストアのウナギ弁当でしょうか。アリストテレスが生態を研究し、『万葉集』にも歌われたウナギは、古くから人間にとって非常に身近な魚でした。でも、ウナギという魚が、地球の長い歴史の中で進化してきた、日本の自然の重要な一部を構成する野生生物でもあるということを、われわれは忘れがちであるように思います。そして、野生生物としてのウナギが住める場所は、この地球上からどんどん少なくなり、絶滅が心配されるまでになっているのです。
ウナギの生態も、まだまだ多くの謎に包まれています。ウナギは日本から2000キロ以上離れたグアム島近くの海の中にそびえる「山」の近くで、新月の夜にだけ産卵するらしいのですが、まだ自然界でウナギの卵を見た人はいません。
ウナギという魚を手がかりに、身近な河川や湖、湿地の環境破壊から、生物種の絶滅や地球温暖化まで、深刻化が指摘されている環境問題を考えてみよう、というのが本書の試みです。
国内各地や海外での取材を続けるうちに、筆者の問題意識はグローバル化した経済の時代の「食」の姿の在り方や、天然資源をどうすれば持続的に利用してゆくことができるのかという問題にまで広がってゆきました。身近なようで実はとってもミステリアスな魚、ウナギが誘う旅に、ご一緒できれば幸いです。
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