編集部だより






 

日本語の源流を求めて
大野 晋著
(新赤版1091)

 
 
 

 日本語は、いつ頃どのように生まれたのか

 つい先日、『産経新聞』(2007年9月3日付)のコラム「ベストセラー再会」で、大野晋著『日本語の起源』(岩波新書、1957年刊)がとりあげられました。ちょうど半世紀前に刊行された本です。1994年に改訂され、「新版」となった後も読み継がれて「今でも日本語論へのだれもが認める古典的入門書」だ、との紹介でした。『日本語の源流を求めて』は、その『日本語の起源』(旧版→新版)の延長線上に位置づけられます。

 この8月に米寿を迎えた著者は、還暦の頃に、たまたま南インドのタミル語に出会い、日本語とタミル語の驚くべき共通性―そっくりの単語が多いばかりか、文法の構造上も―を知ることになりました。日本語の起源をめぐっては、いうまでもなく、さまざまな説があります。ですから、このタミル語に注目した大野説は、激しい議論を呼びました。その議論をふまえ、最新の考古学の知見などもまじえて自らの主張を全面的に展開したのが、今回の本なのです。

 著者は、かつて「万葉集」「日本書紀」など古典文学を広く研究し、また「広辞苑」「岩波古語辞典」の執筆・編纂を通して古典語を深く分析しました。その長い経験が、ほかならぬタミル語・日本語の比較・考察にあたって、どれほど大きな意味をもったことか。今回の書名は、その足跡がひとつながりのものとして今日に至っていることを語っているのです。

 ちなみに、作家の丸谷才一さんは2年前のエッセイで、唐詩選など中国の一流文学が「色情」を嫌うのと対照的に、勅撰集や源氏物語など日本の大古典は「恋がらみ」が多い事実に着目し、こう書いています。
 「どうして日本文学はこんなに恋を大事にしたのか。……この難問に答えるためには、大野晋さんの、日本語は南インドのタミル語を起源とするという説に頼るしかない」(『朝日新聞』2005年1月18日付)。
 どうでしょうか。こうまで言われては、この興味深い謎を解くためにも、さっそく本書を手にとってみるしかなさそうですね。

(新書編集部 坂巻克巳)
 
 
 

■著者紹介
大野 晋(おおの・すすむ)
1919年東京に生まれる。東京大学文学部卒業(専攻・国語学)。現在、学習院大学名誉教授。著書に『日本語の文法を考える』 『日本語の起源 新版 『日本語練習帳』 『日本語の教室』(以上、岩波新書)、『語学と文学の間』(岩波現代文庫)、『日本語の形成』 『弥生文明と南インド』 『考古学・人類学・言語学との対話』(共編)(以上、岩波書店)、『大野晋の日本語相談』(朝日新聞社)ほか。

     
  ■目次
 まえがき
 
 
I
タミル語と出会うまで  
  1 日本とは何か
2 国語学を手段として
3 古典語の研究
 
II
言語を比較する  
  4 言語の比較ということ
5 タミル語との遭遇
6 単語の対応(1)―母音と子音と
7 単語の対応(2)―文例とともに
8 文法の共通
9 五七五七七の韻律
 
III
文明の伝来  
  10 水田稲作は南インドから
11 鉄も南インドから
12 機織も南インドから
13 結婚の方式
14 小正月の行事
15 神という存在
16 石の墓、土の墓
17 グラフィティ(記号文)
 
IV
言語は文明に随いて行く  
  18 船と海上交通
19 何を求めて日本に来たか
20 朝鮮語にもタミル語が来ている
21 タミル語到来以前の日本語
22 日本語の歩んだ道
 

 あとがき
 図版出典一覧

 

  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
日本語の起源 新版 大野晋著 新赤版340
日本語の文法を考える 大野晋著 黄版53
日本語練習帳 大野晋著 新赤版596
日本語の教室 大野晋著 新赤版800
日本語の歴史 山口仲美 新赤版1018
 
 
 


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