編集部だより






 

ルポ 貧困大国アメリカ
堤 未果
(新赤版1112)

 
 
 

 教育、医療、防災、そして戦争まで……
 極端な「民営化」の果てにあるものは?
         
     
  ▲落ちこぼれゼロ法に反対する生徒たち   ▲軍による子どもたちの勧誘に反対する母親  
         
     
  ▲タイムズスクエアにある米軍リクルート・ステーション   ▲製薬会社に抗議するメディケア受給者  
         

 高い乳児死亡率。一日一食食べるのがやっとの育ち盛りの子どもたち。無保険状態で病気や怪我の恐怖に脅える労働者たち、選択肢を奪われ戦場へと駆り立てられていく若者たち―尋常ならざるペースで進む社会の二極化の足元でいったい何が起きているのか? 人々の苦難の上で暴利をむさぼるグローバル・ビジネスの実相とはいかなるものか。追いやられる側の人々の肉声を通して、その現状に迫る。(写真は本書より)

 
 
 

■著者からのメッセージ

 「教育」「いのち」「暮らし」という、国が国民に責任を負うべき政府の主要業務が「民営化」され、市場の論理で回されるようになった時、果たしてそれは「国家」と呼べるのか? 私たちには一体この流れに抵抗する術はあるのだろうか? 単にアメリカという国の格差・貧困問題を超えた、日本にとって決して他人事ではないこの流れが、いま海の向こうから警鐘を鳴らしている。……(略)……

 無理や無関心は「変えられないのでは」という恐怖を生み、いつしか無力感となって私たちから力を奪う。だが目を伏せて口をつぐんだ時、私たちは初めて負けるのだ。そして大人が自ら舞台をおりた時が、子どもたちにとっての絶望の始まりになる。

 現状が辛いほど私たちは試される。だが、取材を通じて得た沢山の人との出会いが、私の中にある「民衆の力」を信じる気持ちを強くし、気づかせる。あきらめさえしなければ、次世代に手渡せるものは限りなく貴いということに。

(本文より)
 
 
 

■著者紹介
堤 未果(つつみ・みか)
東京生まれ。ニューヨーク州立大学国際関係論学科学士号取得。ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科修士号取得。国連婦人開発基金(UNIFEM)、アムネスティ・インターナショナルNY支局員を経て、米国野村證券に勤務中、9・11同時多発テロに遭遇、以後ジャーナリストとして活躍。現在はNY-東京間を行き来しながら執筆、講演活動を行っている。
 著書に『空飛ぶチキン』(創現社出版)、『グラウンド・ゼロがくれた希望』(ポプラ社)、2006年、『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命―なぜあの国にまだ希望があるのか』(海鳴社)で黒田清・日本ジャーナリスト会議新人賞受賞。2006年より朝日ニュースター「ニュースの深層」サブキャスター、「デモクラシー・ナウ!」解説者。

     
 

■目次
 プロローグ

 
 
第1章
貧困が生み出す肥満国民  
  新自由主義登場によって失われたアメリカの中流家庭/なぜ貧困児童に肥満児が多いのか/フードスタンプで暮らす人々/アメリカ国内の飢餓人口
  コラム(1) 間違いだらけの肥満児対策
 
第2章
民営化による国内難民と自由化による経済難民  
  人災だったハリケーン・カトリーナ/「民営化」の罠/棄民となった被災者たち/「再建」ではなく「削除」されたニューオーリンズの貧困地域/学校の民営化/「自由競争」が生み出す経済難民たち
  コラム(2) ニューオーリンズの目に見えぬ宝
 
第3章
一度の病気で貧困層に転落する人々  
  世界一高い医療費で破産する中間層/日帰り出産する妊婦たち/競争による効率主義に追いつめられる医師たち/破綻していくアメリカの公的医療支援/株式会社化する病院/笑わない看護師たち/急増する医療過誤/急増する無保険者たち
  コラム(3) 不安の「フード・ファディズム」
 
第4章
出口をふさがれる若者たち  
  「落ちこぼれゼロ法」という名の裏口徴兵政策/経済的な徴兵制/ノルマに圧迫されるリクルーターたち/見えない高校生勧誘システム「JROTC」/民営化される学資ローン/軍の第二のターゲットはコミュニティ・カレッジの学生/カード地獄に陥る学生たち/学資ローン返済免除プログラム/魅惑のオンライン・ゲーム「アメリカズ・アーミー」/入隊しても貧困から抜け出せない/帰還後にはホームレスに
  コラム(4) 誰がメディアの裏側にいるのか?
 
第5章
世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」  
 

「素晴らしいお仕事の話があるんですがね」/「これは戦争ではなく派遣という純粋なビジネスです」/ターゲットは世界中の貧困層/戦争で潤う民間戦争請負会社/見えない「傭兵」/一元化される個人情報と国民監視体制/国民身分証法/州兵としてイラク戦争を支えた日本人/「これは戦争だ」という実感
  コラム(5) テロより怖い民営化

 

 エピローグ
 初出一覧
 あとがき

 

  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
アメリカ 過去と現在の間 古矢旬 新赤版912
ブッシュのアメリカ 三浦俊章 新赤版844
デモクラシーの帝国―アメリカ・戦争・現代世界 藤原帰一 新赤版802
アメリカ外交とは何か―歴史の中の自画像 西崎文子 新赤版898
アメリカよ 美しく年をとれ 猿谷要 新赤版1029
 
 
 

  ■お詫びとお願い──  
   本書18刷(2008年11月5日発行)のカバーに、一部、誤りのあるものがあることが判明しました。著者名のローマ字表記が、正しくはMika Tsutsumiであるべきところを、誤ってYasuhiro Shiraiと印刷されてしまいました。
 誤植のあるカバーの付いた本をお買い上げになられた方は、お手数をおかけしてまことに恐縮ですが、そのカバーを着払いで下記までお送り下さい。送料小社負担にて、正しいカバーをお送り致します。
 読者ならびに著者の皆様に大変ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
 
    2009年2月16日
岩波書店 
 
 
〒101-8002 千代田区一ツ橋2-5-5
岩波書店営業局販売部 読者係
電話: 03-5210-4111
 



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