編集部だより






 

反貧困―「すべり台社会」からの脱出
湯浅 誠著
(新赤版1124)

 
 
 

 本書の校了間際の土曜日、岩波書店の目の前の中学校で、「反貧困フェスタ2008」が開催されました。講演会や医療相談のほか、音楽ライブに屋台に映画上映にと、さながら文化祭のようでした。この社会には貧困問題が存在するのだということを訴えようと、さまざまな団体から成る「反貧困ネットワーク」が呼びかけて実施されたもので、1600人が参加したそうです。本書の著者の湯浅誠さんもまた、このフェスタの「裏方」の一人として走り回っていました。

 湯浅さんは、野宿者(ホームレス)の支援活動を行うなかで、すさまじい勢いで生活困窮者が増えていることに危機感を覚え、日本の貧困問題の拡がりについて警鐘を鳴らしてきました。本書は、そうした活動経験を生かしながら、どうして貧困が拡がってきているのか、そのことでどんな問題が起きているのかを考えます。そのうえで、人々が貧困問題にどのように立ち向かっているのか、「反貧困」の現場をレポートします。誰もが人間らしく生きることのできる社会へ向けて、その希望を語る熱い一冊です。

(新書編集部 小田野耕明)
 
 
 

■著者紹介
湯浅 誠(ゆあさ・まこと)氏は、1969年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。1990年代より野宿者(ホームレス)支援活動を行う。現在は、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長、反貧困ネットワーク事務局長ほか。著書に『本当に困った人のための生活保護申請マニュアル』(同文舘出版)、『貧困襲来』(山吹書店)ほかがある。

     
 

■目次
 まえがき

 
 
第I部
貧困問題の現場から  
   
 
第1章
ある夫婦の暮らし  
   
 
第2章
すべり台社会・日本  
  1 三層のセーフティネット
2 皺寄せを受ける人々 
 
第3章
貧困は自己責任なのか  
  1 五重の排除
2 自己責任論批判
3 見えない“溜め”を見る
4 貧困問題のスタートラインに

 
第II部
「反貧困」の現場から  
   
 
第4章
「すべり台社会」に歯止めを  
  1 「市民活動」「社会領域」の復権を目指す
2 起点としての〈もやい〉 
 
第5章
つながり始めた「反貧困」  
  1 「貧困ビジネス」に抗して―エム・クルーユニオン
2 互助のしくみを作る―反貧困たすけあいネットワーク
3 動き出した法律家たち
4 ナショナル・ミニマムはどこに?―最低生活費と最低賃金 
 
終 章
強い社会を目指して  
   
 

 あとがき

 

  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
格差社会 何が問題なのか 橘木俊詔著 新赤版1033
労働ダンピング 中野麻美著 新赤版1038
人間回復の経済学 神野直彦著 新赤版782
ルポ 貧困大国アメリカ 堤未果著 新赤版1112
豊かさの条件 暉峻淑子著 新赤版836
 
 
 



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