編集部だより






 

疑似科学入門
池内 了著
(新赤版1131)

 
 
 

 待ち受けるワナにはまらないために

 誰もが気になる「科学」を使った騙しの手口や、それが受け入れられる社会的背景を論じた痛快な本です。科学者でも陥りかねない錯覚や「つい信じてしまう」心理が解き明かされ、「正しく疑う」心構えの大事さがわかります。

 そのほかに、いやそれ以上に、著者の問題意識にあるのは、地球環境問題など科学が不得手とする問題が社会に顕在化している状況です。被害があっても原因がなかなか実証できない!―これは複雑系が関係した問題の特徴なのです。このような状況で「正しく考える」には?

 著者の対抗策の手始めは、疑似科学を広く3つに分類することでした。第1種は占いなどの「まやかし」、第2種は宣伝などに用いられる科学の誤用・悪用・乱用、そして第3種が複雑系が絡んだ問題、というわけです。

 疑似科学の陥穽も環境問題も、簡単な処方のできる問題ではありません。まずは本書での頭脳のストレッチをお勧めします。

(新書編集部 千葉克彦)
 
 
 

■著者からのメッセージ
 (なぜ疑似科学について書くのかという問いに対しては)不十分ではあれ問題を提起しておく必要を感じたためと答えたい。複雑系に絡む問題がさまざまに起こっており、それをどう扱うべきかについて社会的合意が得られていないことが背景にある。……複雑系の問題は、特に未来に対する影響が大きいのだから、このまま手を拱いていると次世代に大きな禍根を残すことになりかねない。

(「あとがき」より)
 
 
 

■著者紹介
池内 了(いけうち・さとる)
総合研究大学院大学教授。1944年兵庫県に生まれる。1967年京都大学理学部卒業、1972年同大学院博士課程修了。1972年京都大学理学部を皮切りに、北海道大学、東京大学、国立天文台、大阪大学、名古屋大学、早稲田大学と移動し、2006年より現職。専門は、宇宙物理学、科学・技術・社会論。
著書―『科学者心得帳』『転回期の科学を読む辞典』『寺田寅彦と現代』(以上、みすず書房)、『禁断の科学』『考えてみれば不思議なこと』『ヤバンな科学』『科学は今どうなっているの?』(以上、晶文社)、『科学の考え方・学び方』 『お父さんが話してくれた宇宙の歴史1-4』(以上、岩波書店)、『物理学と神』(集英社新書)ほか多数。

     
 

■目次
 はじめに

 
 
第1章
科学の時代の非合理主義―第一種疑似科学  
  1 占い、超能力、疑似宗教
2 第一種疑似科学の特徴
3 超常現象の心理学―なぜ信じてしまうのか  
 
第2章
科学の悪用・誤用―第二種疑似科学  
  1 科学を装う手口
2 第二種疑似科学の内幕
 
第3章
疑似科学はなぜはびこるか  
  1 科学へのさまざまな視線
2 自己流科学
3 科学と非合理主義
 
第4章
科学が不得手とする問題―第三種疑似科学  
  1 複雑系とは何か
2 地球環境問題の諸相
3 複雑系との付き合い方
4 予防措置原則の応用
 
終 章
疑似科学の処方箋  
 

1 疑似科学は廃れない
2 正しく疑う心
3 疑似科学を教える
4 予防措置原則の重要さ
5 科学者の見分け方

 

 参考文献
 あとがき

 

  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
だます心 だまされる心 安斎育郎 新赤版954
水俣病 原田正純 青版B-113
科学事件 柴田鉄治 新赤版663
科学の目 科学のこころ 長谷川眞理子 新赤版623
市民科学者として生きる 高木仁三郎 新赤版631
 
 
 



Copyright 2009 Iwanami Shoten, Publishers. All rights reserved. 岩波書店