編集部だより






 

ヴェトナム新時代―「豊かさ」への模索
坪井善明著
(新赤版1145)

 
 
 

 ドイモイから二十余年、最新報告

 現在は、「第2のヴェトナム・ブーム」だそうです。年間30万人以上の日本人がヴェトナム旅行を楽しみ、高級リゾートなども注目を集めています。また、ハノイ近郊にトヨタ・ホンダをはじめとする日本企業が数多く工場を操業し始めており、日本政府の積極的なODA支援にも奨励され、多くの企業がヴェトナム進出を決めています。ヴェトナム人の勤勉さ、労賃が廉価であること、治安状況がいいことなどに加えて、中国に対する一種のカウンターバランスをとる意味でも注目されているそうです。さらに、ヴェトナム株に関心を持つ日本人投資家も急増しています。また、退職後に生活費があまりかからないヴェトナムで暮らそうとする人も増えています。

 一方で、経済の発展に伴って、汚職・腐敗の構造や、都市化の問題、格差の拡大、共産党一党支配の弊害、激しいインフレ等々、多くの課題も表面化してきているといいます。本書では、同国の苦難の歴史をたどって、あらためて「ヴェトナムとは何か」を探り、政治・経済の現況を踏まえて将来の方向性を展望し、そして日越関係の今後について考察します。

 必読書として広く読まれた前著刊行から14年、ドイモイ(刷新)政策採用二十余年の同国の最新報告です。

 
 
 


ヴェトナム街中風景(著者撮影)

 
 
 


ヴェトナム街中風景(著者撮影)

 
 
 


ヴェトナム街中風景(著者撮影)

 
 
 


ヴェトナム街中風景(著者撮影)

 
 
 


タインスアン平和村のグエン・ティ・タイン・フオン医師と著者(右)

 
 
 

■刊行によせて
 ヴェトナムの若者は年寄りを何故あれほど大切にするのかをヴェトナムの友人に聞くと、意外な答えが返ってきた。「ヴェトナムはまだ貧しい国ですが、親も家庭も地域も子どもを愛情一杯大事に育てています。その愛情によって、年寄りを大切にする気持ちが自然に湧いてくるのです。」

 本文に書いたように、ヴェトナムは戦争の傷跡を抱えながら、急速なグローバル化に対応するのに必死である。そこには制度的な弱点があり、それを今後どう克服していくかが課題だと思う。

 参考になればと、長年温めてきた自分の考えを開陳した。しかし、その背後では、ヴェトナムと比較しながら、日本社会の今後の有り様を考えてきたつもりである。日本は制度的には弱点は少ないが、人間の劣化が激しい。ヴェトナムのように、もっと人間を大切にする社会に戻らなければ、という思いを執筆後に強く思った。

(著者)
 
 
 

■著者紹介
坪井善明(つぼい・よしはる)1948年、埼玉県生まれ。1972年、東京大学法学部政治学科卒業。1982年、パリ大学社会科学高等研究院課程博士。1988年に、渋澤・クローデル賞、1995年に、アジア・太平洋特別賞受賞。
現在―早稲田大学政治経済学術院教授
専攻―ヴェトナム政治・社会史、国際関係学、国際開発論
著書―L'Empire vietnamien face a la France et a la Chine (L'Harmattan, Paris)、『近代ヴェトナム政治社会史』(東京大学出版会)、『ヴェトナム 「豊かさ」への夜明け』(岩波新書)、『ヴェトナム現代政治』(東京大学出版会)、『YOSAKOIソーラン祭り―街づくりNPOの経営学(共著,岩波アクティブ新書)など。

     
 

■目次
 はじめに

 
 
第1章
戦争の傷跡  
 

1.ヴェトちゃんの死
2.枯葉剤をめぐる諸問題
3.枯葉剤被害者の第三世代
4.身寄りのない老人たち
5.ヴェトナム戦争とは
6.その他の後遺症

 
第2章
もう一つの「社会主義市場経済」  
 

1.ドイモイ政策の二〇年
2.ITの普及
3.この国の「豊かさ」の条件

 
第3章
国際社会への復帰  
 

1.国際的孤立
2.ASEAN加盟
3.米越国交正常化の実現
4.WTO加盟の条件

 
第4章
共産党一党支配の実相  
 

1.ヴェトナム共産党の特徴
2.共産党の危機感
3.独特の国家機構
4.変わる指導部

 
第5章
格差の拡大  
 

1.格差と平等意識
2.非党員でも金持ちになれる
3.疲弊する農村部
4.圧迫される少数民族

 
第6章
ホーチミン再考  
 

1.愛国者ホーチミン
2.現代ヴェトナム社会におけるホーチミン
3.ホーチミン思想
4.ホーチミンの「共和国」

 
第7章
これからの日越関係をさぐる  
 

1.グローバル化の中での日本の位置は
2.深まる交流
3.さまざまな問題点
4.今後の課題

 
終章
新しい枠組みを  
 

1.政治体制の変革
2.工業化への道
3.目先の苦難を越えて
4.小田実の死

 

 あとがき
 ヴェトナム史略年表
 主要参考文献

 

  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
同時代のこと―ヴェトナム戦争を忘れるな 吉野源三郎 青版C-43
世直しの倫理と論理 上 小田実 青版C-45・46
ヴェトナム 「豊かさ」への夜明け 坪井善明 新赤版344
カラー版 ベトナム 戦争と平和 石川文洋 新赤版962
東アジア共同体―経済統合のゆくえと日本 谷口誠 新赤版919
 
 
 



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