人間をみつめた中間レポート
アフリカは遠い。ついこの間の今年5月、横浜で日本政府主催の「アフリカ開発会議」が行われたばかりというのに、また7月の洞爺湖サミットではジンバブエの現状が議題に上ったというのに、私たちはこの大陸で今起きていることについて、確かな手触りのある情報をどれほど得ているでしょうか。
本書の著者・松本仁一さんは、この30年近くにわたって、たびたびアフリカ各地に滞在し、新聞記者らしく「足で稼いだ」現地の情報を、日本エッセイストクラブ賞も受賞している筆力で発信し続けてきた、数少ない存在です。長くつとめた新聞社を退社した節目の年に、これからも続くジャーナリスト生活の「中間レポート」として、本書を書き上げました。
たとえば冒頭でふれたジンバブエ。前年比16万パーセントという信じがたいインフレを引き起こし、国民生活が窮地におちいるに至ったのはなぜなのか。他の国々にも通じる「指導者層の腐敗」という病弊が明らかにされるとき、読者はその深刻さに頭をかかえざるを得ないでしょう。中国の官民あげての進出、貧困に押し出されるように国外に出た人々が日本にまで達しているという現実も描かれます。アフリカは近かった。そう思わされます。
それでも人々は生きていく。その力は本来アフリカの人たち自身の中にあったものです。「ただで物を配る援助は絶対にやらない」をモットーに活動する農業NPO、貧困を逆手にとった旧黒人居住区観光ツアーを企画する若者たち。松本さんの人間をみつめた「レポート」から、あなたは何を感じ取るでしょうか。
(新書編集部 早坂ノゾミ)
|