編集部だより






   

ポスト戦後社会
吉見俊哉著
(新赤版1050)

 
 

 高度成長の後に待ち受けていたものは

 バブルの発生と崩壊、いつまでも混迷を続ける政治とそれに伴い深まる政治不信、そして高まる社会不安……。列島全体が酔いしれた「高度成長」の夢のあと、待ち受けていたのは果たしてどんな社会だったのでしょうか。崩れゆく冷戦構造のなかで、日本は激動する世界から取り残されて、もしかしたら次第に周回遅れのランナーとなっていったのではないでしょうか。

 好評シリーズの第9巻では、60年代半ばから現在まで、政治・経済・社会・家族―すべてが変容し崩壊していく過程をたどります

 下の「著者からのメッセージ」にもあるように、本巻では、いやおうなくグローバリゼーションの時代に突入する中で、「日本」および「日本人」という枠組み自体が揺らいでいる現実をさまざまな角度から検証し、従来の「日本通史」という枠組み自体をも問い直していきます。今後の「日本史」そのものの在り様をも問いかける、刺激に満ちた一冊です。

     
 

■著者からのメッセージ

 本書がテーマにしてきたのは……日本近現代の時間や主体が自壊していく過程である。この過程を促してきた最大のモメントはグローバリゼーションだが、国内的にみるならば、高度成長期からの開発の徹底、地域開発からリゾート開発への流れのなかで列島の自然は深刻なダメージを受け、これに産業空洞化が追い打ちをかけた。家族レベルでは、果てしなく広がる郊外に自閉する核家族のなかで、若者たちは内的自我を空洞化させてきた。新自由主義は、「豊かさ」の幻想を打ち砕き、「格差」の現実を私たちに突きつけている。

 「戦後」から「ポスト戦後」への転回は、同じ日本史のなかの段階移行なのではない。むしろそうした歴史の主体の自明性がぐらつき、空洞化しているのである。私たちは〈歴史〉を語る実践を手放したいとは思わないが、「日本史」がもはや不可能になる時代を生きている。

 だから本書は、通常よくある「ドル危機とオイル・ショック」「日中国交正常化」「高度成長から安定成長へ」「昭和から平成へ」「バブル経済と平成不況」「55年体制の崩壊」といった変化の時間的連続としては歴史を語らない。そのような連続性そのものが問われていると考えるからだ。70年代半ば以降、過去からの連続性としての歴史がどう壊れてきたのかを、本書は多面的に考えてみようとした。

(本書「あとがき」より)
     
 

■著者紹介
吉見俊哉(よしみ・しゅんや)
1957年 東京都に生まれる。
1987年 東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。
現在―東京大学大学院情報学環教授
専攻―社会学・文化研究・メディア研究
著書―『都市のドラマトゥルギー』(弘文堂)
   『博覧会の政治学』(中公新書)
   『メディア時代の文化社会学』(新曜社)
   『「声」の資本主義』(講談社)
   『リアリティ・トランジット』(紀伊國屋書店)
   『メディア・スタディーズ』(編、せりか書房)
   『カルチュラル・スタディーズ』(岩波書店)
   『万博幻想』(ちくま新書)
   『メディア文化論』(有斐閣)
   『親米と反米』(岩波新書)ほか多数。

     
 

■目次
 はじめに

 
 
第1章
左翼の終わり  
 

1 あさま山荘事件と1970年代
2 「運動」する大衆の終わり
3 ベ平連とウーマンリブ、反復帰論

 
第2章
豊かさの幻影のなかへ  
 

1 高度経済成長の頂点で
2 消費社会と都市の若者たち
3 重厚長大から軽薄短小へ

 
第3章
家族は溶解したか  
 

1 変容する日本人の意識
2 郊外化と核家族の閉塞
3 虚構の世界へ

 
第4章
地域開発が遺したもの  
 

1 反公害から環境保護へ
2 地域開発とリゾート開発の結末
3 農村崩壊と地域自治への模索

 
第5章
「失われた10年」のなかで  
 

1 震災・オウム・バブル崩壊
2 国鉄民営化から郵政民営化へ
3 拡大する格差

 
第6章
アジアからのポスト戦後史  
 

1 企業の海外進出と産業空洞化
2 「海外」の経験・「日本」の消費
3 「戦後」の問い返しと日米関係

 

 おわりに

 あとがき
 参考文献
 略年表
 索引

 

  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
ディズニーランドという聖地 能登路雅子 新赤版132
戦後アジアと日本企業 小林英夫著 新赤版725
戦後政治史 石川真澄著 新赤版904
戦後史 中村政則著 新赤版955
沖縄現代史 新版 新崎盛暉著 新赤版986
社会学入門―人間と社会の未来 見田宗介著 新赤版 1009
親米と反米―戦後日本の政治的無意識 吉見俊哉著 新赤版1069
不可能性の時代 大澤真幸著 新赤版1122
 
 
 



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