貧困、解雇、過労死……労働現場は、いま
「日本経済は危機的な状況にある」「日本経済を、いまどう再建するか」……。テレビのニュースや新聞では、こんな言葉が飛び交っています。特に昨年(2008年)来の「世界金融危機」の勃発以降、こうした言葉を目にし、耳にする機会は増えていると思います。あるいは、「日本経済」を「日本企業」と言いかえてみても、よいかもしれません。
「日本経済」も「日本企業」も抽象的な概念です。しかし、それらを支えているのは、まぎれもない労働者一人一人、そう「人間」なのです。こんな常識的な前提が、いま日本社会では通用しなくなっているようです。「日本経済を再建する」ために、日本の政治や企業は何をしてきたのでしょうか。非正規雇用の増大、大幅な賃下げ、解雇……。すなわち「日本経済」「日本企業」を支える労働者を使い捨てにし、彼らの人間らしい生活を奪うことで対応してきたのではなかったでしょうか。昨年末に発生した大量の「派遣切り」は、そのあまりにも象徴的なできごとです。
しかし、経済や企業の支え手の部分をとことん弱体化させてしまえば、企業の力は奪われます。そして、企業、日本経済はさらなる不況に追い込まれる―。
本書は、朝日新聞編集委員の竹信三恵子さんが、長期にわたり、日本の労働現場の実態を綿密に取材してきたルポです(労働問題を鋭く追究してきた竹信さんの活躍には、今年(2009年)「貧困ジャーナリズム大賞」が与えられています)。過酷な労働状況が日本社会にどんな影響をもたらしているのか、ミクロ、マクロ双方の視点から浮き彫りにしていきます。また、つい先月(3月)に行ったヨーロッパ取材をもとに、デンマークなどヨーロッパ各国が労働問題にどう対応しているか、最新の状況も報告されています。日本の今後を考えるうえで、たくさんのヒントが与えられるでしょう。まず実態を知るためにも、ぜひ多くの方に読んでいただければと思います。
(新書編集部 田中宏幸) |