編集部だより






 

〈私〉時代のデモクラシー
宇野重規著
(新赤版1240)

 
 
 

 〈私たち〉の政治に希望はあるのか

 私たちは今、どのような時代を生きているのでしょうか。政治思想史・政治哲学を専門とする著者は、現代を、一人ひとりが〈私〉意識を強く持ち、他人とは違う自分らしさを追い求める「〈私〉時代」であると位置付けます。そのような社会でデモクラシーはどのような意味を持つのか、そして分断されてしまった〈私〉と〈私〉を結びつけ、〈私たち〉の問題を解決することは可能なのか、が本書のテーマです。

 平等意識の変容や新しい個人主義の出現について考察した上で、〈私〉と政治の関係をとらえなおし、「社会」について再考します。議論を進める上で、19世紀フランスの思想家トクヴィル、日本の政治学に大きな足跡を残した丸山眞男、あるいは経営学・マネジメント論で知られるドラッカーまで、多くの研究者の思想が参照されます。

 著者は冒頭、「〈私〉とデモクラシーというのは、何だか不思議な組み合わせに見えなくもありません。ふつうデモクラシーというと、出てくるのは「市民」や「国民」、あるいは「人民」や「民衆」などです。……しかしながら、本書では〈私〉こそが、現代デモクラシーを考える上での鍵だと主張したいと思っています」と述べています。政治の混迷の時代だからこそ、もっとも身近な〈私〉の視点から考える必要があるのではないでしょうか。

(新書編集部 安田 衛)
     
 

■著者紹介
宇野重規(うの・しげき)氏は1967年生まれ。1996年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。現在、東京大学社会科学研究所准教授(政治思想史・政治哲学)。
 著書に『デモクラシーを生きる―トクヴィルにおける政治の再発見』(創文社)、『政治哲学へ―現代フランスとの対話』(東京大学出版会、渋沢・クローデル賞ルイ・ヴィトン特別賞)、『トクヴィル 平等と不平等の理論家』(講談社、サントリー学芸賞)、『トクヴィルとデモクラシーの現在』(共編、東京大学出版会)、『希望学[1]希望を語る―社会科学の新たな地平へ』(共編、東京大学出版会)ほか。

     
  ■目次   
   はじめに

 
 
第一章
平等意識の変容  
 

1 グローバルな平等化の波
2 可視化した不平等
3 「いま・この瞬間」の平等

 
第二章
新しい個人主義  
 

1 否定的な個人主義
2 「自分自身である」権利
3 自己コントロール社会の陥穽

 
第三章
浮遊する〈私〉と政治  
 

1 不満の私事化
2 〈私〉のナショナリズム
3 政治の時代の政治の貧困

 
第四章
〈私〉時代のデモクラシー  
 

1 社会的希望の回復
2 平等社会のモラル
3 〈私〉からデモクラシーへ

 

 むすび
 参考文献
 あとがき

 

  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
近代民主主義とその展望 福田歓一 黄版1
政治の精神 佐々木毅 新赤版1189
市民の政治学―討議デモクラシーとは何か 篠原 一 新赤版872
政権交代論 山口二郎 新赤版1178
生活保障 排除しない社会へ
宮本太郎 新赤版1216
 
 
 



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