編集部だより






 

漢文と東アジア―訓読の文化圏
金 文京著
(新赤版1262)

 
 
 

 訓読は日本独自のものではない!

 近年、「東アジア共同体」など東アジアを一体のものと捉えようとする動きが盛んですが、本書は、中国、朝鮮、日本、ヴェトナムなど東アジアの国々で、漢文を共通の知識とする文化圏があったことを「訓読」という現象を通して明らかにした文化論です。江戸時代、日本へやってきた朝鮮通信使と日本の学者がお互いに漢字を書いて筆談をしたことが知られていますが、その背景にも訓読という共通の文化があったのです。

 訓読に関する新発見の資料などを使いながら、漢文訓読が日本独自のものではなく、東アジアに共通する現象であったことが豊富な事例を通して明らかにされています。なかでも、漢文訓読の根底には仏典の漢訳体験があったことを示された箇所などには、文化の伝播のわくわくするような面白さがあります。

 金先生に初めてお目にかかった時、これが元になると言われてコピーをいただいた論文「東アジアの訓読現象」を読ませていただいてから、ずいぶん時間が経ちましたが、東アジアに関する画期的文化論が一冊にまとまったことを心から嬉しく思っています。

(新書編集部 平田賢一)
     
 

■著者紹介
金 文京(きん・ぶんきょう)1952年、東京都に生まれる。1979年、京都大学大学院文学研究科博士課程修了。専攻は、中国文学。現在、京都大学人文科学研究所教授。
著書―『中国小説選』(角川書店、1989)『教養のための中国語』(大修館書店、1991)『三国志演義の世界』(東方書店、1993)『三国志の世界―後漢三国時代』(講談社、2005)など。
訳書―『老乞大―朝鮮中世の中国語会話読本』(共訳、平凡社東洋文庫、2002)

     
  ■目次   
 


 はじめに

 
 
第一章
漢文を読む―日本の訓読  
 

1 訓読とはなにか?
2 訓読と漢訳仏典
3 訓読の思想的背景
4 草創期の訓読―奈良末期から平安中期まで
5 完成期の訓読―平安中期から院政期まで
6 訓読の新たな展開―鎌倉時代から近代まで
7 明治以降の訓読

 
第二章
東アジアの訓読―その歴史と方法  
 

1 朝鮮半島の訓読
2 新羅の訓読と日本の古訓点
3 朝鮮半島における訓読の思想的背景
4 中国周辺の訓読現象
5 中国の訓読現象

 
第三章
漢文を書く―東アジアの多様な漢文世界  
 

1 東アジアの詩の世界
2 さまざまな漢文

 


  おわりに―東アジア漢文文化圏

 あとがき
 図版出典・所蔵先
 索引

 

  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
漢字伝来 大島正二著 新赤版1031
日本の漢字 笹原宏之著 新赤版991
四字熟語ひとくち話 岩波書店辞典編集部編 別冊10
漢語日暦 興膳 宏著 新赤版1260
漢詩―美の在りか 松浦友久著 新赤版768
 
 
 



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