編集部だより






 

和本のすすめ―江戸を読み解くために
中野三敏著
(新赤版1336)

 
 
 

 和本リテラシーの回復のために

 この本のもとになったのは、雑誌『図書』2008年6月号〜2010年11月号まで「和本教室」と題した連載です。それに他で書かれたものを何篇か加え、入門書となるよう配列を整えてまとめていただきました。

 近年はエコロジーの観点などから江戸時代の見直しが進んでいますが、江戸を理解するためには、江戸文化そのものとして唯一残っている和本が読めるようになることが必要でしょう。なにしろ和本は近代以前の日本文化を理解するための最大のインフラで、歴史上の時間を遡るための唯一のツールなのですから。

 本書は、和本の歴史、種類、作り方などの基本的な事項を懇切丁寧に述べながら、変体仮名(くずし字)を読み解くことに始まる和本リテラシーの重要性を説いたものです。

 この分野の第一人者で、変体仮名がほとんど読めない状況になっていることを危惧された中野先生が伝授する和本入門です。あなたも、変体仮名に挑戦してみませんか。

(新書編集部 平田賢一)
     
 

■著者からのメッセージ

 現在の文化を成熟させるには、何はともあれ過去を現在から連続的に振り返る術を持たねばならぬ。しかるに現在の日本の知識人の大半は、その術をいとも簡単にふり捨てて、しかもそのことの重大さにほとんど気がついていないのではないか。小学生といえば、18世紀の独立宣言を読めないアメリカの小学生はおそらくいないはずである。翻って日本人の大人で、明治4年(1871)の福沢諭吉の『学問のすゝめ』を活字本に頼らずに読める人が、0.004パーセントという現状は、何としても是正されるべき事柄ではないだろうか。ここにこそ、今「和本のすすめ」を書く最大の理由がある。

(本書より)
     
 

■著者紹介
中野三敏(なかの・みつとし)1935年福岡県に生まれる。1964年早稲田大学大学院修士課程修了。専攻は江戸文学。現在、九州大学名誉教授。
 編著書に『和本の海へ―豊饒の江戸文化』(角川書店)、『古文書入門 くずし字で「百人一首」を楽しむ』(角川学芸出版)、『戯作研究』(中央公論社)、『近世子どもの絵本集』(岩波書店)、『江戸狂者伝』(中央公論社)、『写楽―江戸人としての実像』(中央公論新社)、『江戸名物評判記案内』(岩波書店)、『近世新畸人伝』(岩波書店)、『本道楽』(講談社)、『洒落本大成』(中央公論社、共編)、『大田南畝全集』(岩波書店、共編)ほか。

     
  ■目次   
     
 

 はじめに―いま、なぜ和本か。そして変体仮名のすすめ

 
 
第一章
江戸の出版事情  
 

1 日本の出版略史
2 本屋の誕生
3 本屋の実体―京都を中心に
4 学芸文化への貢献―丹波屋理兵衛のこと
5 出版条令について
6 出版に関わる経費
7 版権・著作権
8 原稿料について
9 田舎版(地方版)のこと

 
第二章
和本には身分がある  
 

1 写本と板本
2 写本の世界
3 江戸の写本
4 写本と出版規制
5 整版と活字版―営業と非営業の間で
6 拓版のこと―『乗興舟』讃
7 刷りものの世界

 
第三章
 和本のできるまで  
 

1 和本のつくり方
2 和本の外型と名称
3 彫り・刷り・修正について
4 細部の名称について

 
第四章
和本にはどんな本があるか  
 

1 和本の分類
2 絵本・絵入り本・画譜
3 江戸のサブ・カルチャー
4 遊女評判記―『難波鉦』という本
5 吉原細見
6 洒落本の世界
7 艶本(春本・わ印・埒外本)

 
第五章
海外の和本事情  
 

1 韓国・台湾篇
2 ロシア・ドイツ篇
3 アメリカ篇

 

 おわりに―和本リテラシーの回復を願って
 あとがき
 索引

 

  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
江戸名物評判記案内 中野三敏 黄版313
カラー版 浮世絵 大久保純一 新赤版1163
隅田川の文学 久保田 淳 新赤版461
江戸の旅文化 神崎宣武 新赤版884
本は、これから 池澤夏樹編 新赤版1280
 
 
 



Copyright 2010 Iwanami Shoten, Publishers. All rights reserved. 岩波書店