編集部だより






 

ラジオのこちら側で
ピーター・バラカン著
(新赤版1411)

 
 
 

 ラジオは情熱

 ピーター・バラカン氏がはじめて日本にやって来たのは1974年夏。この本は、日本語を学んでいた若きイギリス人が日本社会にやってきて奮闘の末、ラジオの仕事につき、マーケットやメディアの激変の波を受けつつ頑固にポリシーを貫いて今にいたるまでの、ちょっとしたドラマとエピソード、その時々に流れた・流した音楽について綴ったエッセイです。「はじめに」を一部だけご紹介して、バラカン氏とラジオの縁の一端を、本書へのご招待にいたしましょう。

 
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 「1972年に新たな番組に出会ってぼくの人生が転換期を迎えます。BBCには全国の放送と別にローカル放送もありますが、ロンドンだけのローカル局で日曜日のお昼に放送開始した番組“Honky Tonk”に並々ならぬ衝撃を受けたのです。…自分にDJという職業が可能かも知れないと初めて思ったのはチャーリー・ギレットの放送を聞いてからでした。

 …だめもとでラジオ番組のデモ・テープを作ることにしたのです。…スタジオでテープにダビングした曲の部分とぼくのしゃべりをうまく編集し、一本のプロ仕様のテープにまとめてもらいました。それをチャーリー・ギレットの番組を放送していたBBC Radio Londonに持ち込み、受付の人に預けて、「どなたかプロデューサーに聞いてもらえたら嬉しい」と伝えるだけで、何となく不安な気持ちのまま帰りました。…

 …「あれですか。うちでああいうものを再生する機材はないからもう一度カセットで持ってきてもらえませんか」と言うのです。愕然としました。…実は、そのタイミングで既に日本での仕事が決まりかけていました。未知の国で未知の音楽出版の仕事という冒険が待っていたので、ラジオ番組を持つ夢はいったんお預けとなりました。

 本編の物語はそこから始まります。どうぞお付き合いください。」

 
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 そのときBBCがバラカン氏を英国に引き留めていたら…。ピーター・バラカンを日本に送り出してくれてありがとう、BBC。

     
 


     
 

■著者紹介
ピーター・バラカン(Peter Barakan)1951年イギリス・ロンドン生まれ。73年ロンドン大学東洋アフリカ研究学院日本語学科卒業。74年新興楽譜出版社入社、来日。80年退社、ヨロシタ・ミュージック入社。86年〜フリーランス。ラジオやテレビの音楽番組を中心に、DJや司会を多数担当、ブロードキャスターを名乗る。2012年9月〜InterFM(エフエム インターウェーブ)執行役員。
 著書に、『魂(ソウル)のゆくえ』『ぼくが愛するロック名盤240』『猿はマンキお金はマニ 日本人のための英語発音ルール』『わが青春のサウンドトラック』『ブラック・ミュージック 200CD+2』『ピーター・バラカン音楽日記』ほか。

     
  ■目次   
   はじめに  
 

 

 
 
アン・イングリッシュ・マン・イン・トーキョー 1974〜1979  
  1974年の就職/はるばる持ってきた20枚/未知の音楽との遭遇/どこでも聞こえてきた大工の音/日本人にうけないジャズ・ファンク/ブルーズ・ブーム/歌詞の聞き取りアルバイト/スティーヴィ・ワンダー全盛期/音楽業界の実感/トム・ペティという高いハードル/意外に成功したエルヴィス・コステロ/〈マスカレード〉/FEN、大相撲、歌謡曲/気になった日本のミュージシャン/ディスコ・ブーム/タテ社会はつらい/ポピュラー・ミュージックと時代背景/ボブ・ディラン/助っ人が主役?/音楽雑誌の全盛期/人生初のDJ仕事
●1970〜1979の10曲
 
DJからブロードキャスターへ 1980〜1989  
  サウンド・コネクション〜ロッカダムIII/1980年12月/選曲するということ/ジョン・ピールとチャーリー・ギレット/YMOとヨロシタ・ミュージック/テクノ・ブーム/「東洋的」なもののパロディ/日本の音楽を海外に売る/東京ニュー・ウェイヴの活気/スタジオ・テクノポリス27/メインのDJ/ザ・ポッパーズMTV/TVでDJ/喧々諤々の選曲会議/「メジャー」と「マイナー」/輸入盤の売り上げに貢献/もとは販促材料/TVの威力/ヴィデオ・クリップ全盛期の終わり/NHK-FMに進出/eメールのアルバイト/CBSドキュメント/台本に鍛えられる/ブロードキャスター/ベイFM開局/日本で暮らしていく/ワールド・ミュージックの気配/ワット・イズ・ソウル/年間ベストテンにワールド・ミュージックが増える
●1980〜1989の10曲
 
ワールド・ミュージック開眼 1990〜1999  
 

ワールド・ミュージックのゆくえ/スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド/ワールド・ミュージックを聴く耳/ベイ・シティ・ブルーズの終了/インターFMの開局/ワンマン・オペレイション/レイ・チャールズのシブいリクエスト/敷居が高い?/ロンドンからのエアチェック/ウィークエンド・サンシャイン/公共放送と営業広告/プレイリスト/無名のミュージシャンの曲も/スタジオで生演奏/インターネット・ラジオ/衛星放送TVの「pbs」
●1990〜1999の10曲

墓場シフトから生きた音楽を 鷲巣 功×ピーター・バラカン
エディ・コクランとボー・ディトリー/墓場シフト/エッジの効いた曲を/DJの仕事/先達たち/毒舌家/ベイFMで/ジャズ、再発見/DJのビート/AMとFM/大きなメディアではないラジオ

 
世紀も変わり、メディアも変わる 2000〜2009  
  FM雑誌の終刊/9・11とその後/何をかけるか/イラク戦争とテクサス娘/何をしゃべるか/「政治の話はやめにして」/プロテスト・ソング/NHKワールドでジャパノロジー/「バラカン・ビート」の終了と生DJ/音楽メディアとしてのラジオの様々な困難/アメリカの衛星ラジオ/DJボブ・ディランの「TTRH」/どの局も同じフォーマット?/衛星放送のDJ/インターネット・ラジオの「バラカン・ビート」/ディジタル・ラジオ/バラカン・モーニング
●2000〜2009の10曲
 
ラジオのゆくえ 2010〜  
 

訃報と追悼と、残る音楽/ピンポンDJはライヴ選曲/「CBSドキュメント」の終了/有料放送の可能性は?/2011年3月11日/震災後、朝のラジオで/海外メディアの目線/ライフスタイル・ミュージアム/ラジコradiko/「バラカン・ビート」再び/ジョン・ピールのアーカイヴ/DJの記憶容量/オール・ミュージック・ガイド/クラウドで音楽/ストリーミング・サーヴィス/BBCとNHK/ローカルでグローバルなラジオ/ウォークマンは苦手だった/ラジオから「流れてくる」
●2010〜2012の10曲

   
 

 あとがき
 ●ピーター・バラカンが選ぶ時代を動かしたプロテスト・ソング50曲
 ●ディスク一覧

 

  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
世界の音を訪ねる―音の錬金術師の旅日記
久保田麻琴 新赤版1011
人生を肯定するもの、それが音楽 小室 等 新赤版888
コルトレーン ジャズの殉教者 藤岡靖洋 新赤版1303
Jポップとは何か―巨大化する音楽産業 烏賀陽弘道 新赤版945
メディアと日本人―変わりゆく日常 橋元良明 新赤版1298
 
 
 



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