編集部だより






 
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朝鮮と日本に生きる―済州島から猪飼野へ
金 時鐘著
(新赤版1532)

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 日韓のはざまに生きた詩人の稀有の回想記

 金時鐘先生の著作に初めて接したのは、『さらされるものとさらすものと』(1975年)だったように思います。差別の問題をラディカルに考えぬいておられる、その姿勢に共感しました。そして、四・三事件についての金石範先生との対談集『なぜ書きつづけてきたか なぜ沈黙してきたか』(2001年)での証言は、衝撃的なものでした。

 四・三事件について、もっと語っていただきたいとお願いしつづけて、『図書』の連載(2011年6月〜2014年9月)が実現し、さらに大幅加筆していただいて、新書として結実しました。第7章の最後、「小野十三郎『詩論』とその仲間たち」以後が加筆していただいたところです。

 加筆部分では、さまざまな苦難の末に、詩人金時鐘が誕生していく様が活写されています。新書という制約の中で十分な紙数をとっていただけなかったことは残念ですが、稀有の回想記ができる現場に立ちあうことができました。

 今年は戦後70年。戦後史を考える上でも貴重な証言をしていただいた一冊だと思います。ぜひ、お読みいただけたらと願っています。

(新書編集部 平田賢一)
     
 

■著者からのメッセージ

 『図書』の連載を機に私はどのような関わりから「四・三事件」の渦中に巻き込まれ、私はどのような状況下で動いていたのか。“共産暴徒”のはしくれの一人であった私が、明かしうる事実はどの程度のものか、を改めて見つめ直すことに注力しました、今更ながら、植民地統治の業の深さに歯がみしました。反共の大義を殺戮の暴圧で実証した中心勢力はすべて、植民地統治下で名を成し、その下で成長をとげた親日派の人たちであり、その勢力を全的に支えたアメリカの、赫々たる民主主義でした。

 具体的にはまだまだ明かせないことをかかえている私ですが、四・三事件の負い目をこれからも背負って生きつづけねばならない者として、私はなおなお己に深く言い聞かせています。記憶せよ、和合せよと。

(「あとがき」より)
     
 

■著者紹介
金 時鐘(キム・シジョン)1929年、釜山生まれ。詩人。1948年の済州島四・三事件を経て来日。1953年に詩誌『ヂンダレ』を創刊。日本語による詩作を中心に,批評などの執筆と講演活動を続ける。
 著書・共著書・訳書・編訳書に、『さらされるものとさらすもの』(明治図書出版、1975年)、『「在日」のはざまで』(立風書房、1986年)、『なぜ書きつづけてきたか なぜ沈黙してきたか』(平凡社、2001年)、『わが生と詩』(岩波書店、2004年)、『尹東柱詩集 空と風と星と詩』(もず工房、2004年)、『再訳 朝鮮詩集』(岩波書店、2007年)、詩集に『地平線』(ヂンダレ発行所、1955年)、『新潟』(構造社、1970年)、『光州詩片』(福武書店、1983年)、『原野の詩』(立風書房、1991年)、『化石の夏』(海風社、1998年)、『境界の詩』(藤原書店、2005年)、『失くした季節』(藤原書店、2010年)など。

     
  ■目次   
     
   はじめに  
     
 
第1章
 悪童たちの中で  
   
 
第2章
 植民地の「皇国少年」  
   
 
第3章
 「解放」の日々  
   
 
第4章
 信託統治をめぐって  
   
 
第5章
 ゼネストと白色テロ  
   
 
第6章
 四・三事件  
   
 
第7章
 猪飼野へ  
   
 
第8章
 朝鮮戦争下の大阪で  
   
 
終 章
 朝鮮籍から韓国籍へ  
   
   あとがき
 年譜

 

  ■岩波新書にはこんな本もあります  
 
在日朝鮮人 歴史と現在
水野直樹・文 京洙著 新赤版1528
植民地朝鮮と日本 趙 景達著 新赤版1463
韓国現代史 文 京洙著 新赤版984
北朝鮮現代史 和田春樹著 新赤版1361
戦後史 中村正則著 新赤版955
 
 
 
 
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