2000年12月号 今月の‘科学’から

白川博士導電性高分子の開発でノーベル化学賞受賞
ヨウ素などをドープしたポリアセチレンに電気が流れるという大発見は,たまたまポリアセチレンの薄膜が合成されたことがきっかけだった.この大発見は,物性物理の理論を大いに刺激し,また発光素子などの工学技術の発展をもたらした.(<対談>白川英樹氏・福山秀敏氏,p.1039)

巨大基礎科学――核融合ITER計画に向けた提言
アメリカ合衆国が撤退を決めたものの,日,欧,露の3極を中心に,燃焼プラズマの実現をめざしたトカマク型のコンパクトITER建設計画が進んでいる.プラズマ輸送の解明など基礎科学への貢献が期待されるが,核融合の実用化のめどはまだ立っていない.(政池明氏,p.1054)

変動帯日本列島で地層処分は実現できるのか
原子炉内で発生する強い放射能をもった核のごみ,高レベル放射性廃棄物を地下深くに埋め捨てる地層処分のための法律ができ,事業化が始まった.しかし,基礎研究のレベルは不十分であり,計画は大混乱を招きかねない.(第1回,藤村陽氏・石橋克彦氏・高木仁三郎氏,p.1064)

納豆菌と枯草菌の中間種を育種した
バクテリアが他のバクテリアのDNAを自らのゲノムに組み込むという,驚くべき性質の全貌が明らかになってきた.その性質を利用することで,枯草菌に納豆菌のDNAを取り込ませ,納豆状のねばを引く中間種をつくりだす――デザインする――ことに成功した.(板谷光泰氏,p.1073)

科学者の業績を“客観的に”測定できるのか
被引用度やインパクトファクターを用いた科学者の業績評価は無批判に受け入れられるものなのか.科学計量学の手法は,例えば,よく引用される論文とは,位置づけのための道標となる論文であり,必ずしもよい論文とは限らないことを示す.(藤垣裕子氏・牧野淳一郎氏,p.1081)

■“爆発と崩壊”という“定説”は欧米人の信じ込みの産物?
定説では,シカ個体群の変動は,爆発的な増加と,絶滅に近い崩壊を示すとされていた.しかし,金華山島での長年の結果は,そうではなかった.無垢の土地への侵入が崩壊を招くという“失楽園”イメージが,欧米の研究者の視点に影響を与えていたらしい.(高槻成紀氏,p.1091)

スローガン先行の“改革”よりも実質を高める努力を
日本における教育改革は,予算がともなわず,枠組やスローガンを現場に押し付けるだけのものが多かった.小中高,大学,学会,市民,行政のそれぞれが,ここで示す果たすべき役割を果たし,支援のネットワークが広がることで,教育の再生が可能になる.(兵頭俊夫氏,p.1100)

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