■最高エネルギー宇宙線は,どこからきてどこまで高くなるか
理論的には越えるはずのない限界を越えた高エネルギーの宇宙線が,宇宙空間を飛んでいる.日本のAGASA観測装置などが明らかにしたこの事実は何を語るのか(高橋義幸氏I,p.128,手嶋政廣氏,p.139).
それは,相対性原理ではローレンツ変換をしても慣性系は同等という常識を破るかもしれない(佐藤文隆氏,p.183).
南半球のアルゼンチンでも,地球大気に突入してきた宇宙線の大気シャワーを観測するピエール・オージェ実験の準備が国際協力で進んでいる(J.W.CRONIN氏,p.171).
国際宇宙ステーションに地球を見下ろすように建設されるEUSO望遠鏡は,広大な地球大気を利用し,超高エネルギー宇宙線を,陸上観測よりもはるかに多くとらえることができる(高橋義幸氏II,
p.176).
■旧石器発掘捏造をなぜ見抜けなかったのか
石器とそれを含む地層との間には褐鉄鉱などからなる薄い膜が発達する.発掘の際には,注意深くそのような石器の産状を観察・記録する必要がある.いっぽう,藤村氏が発掘した石器に,農耕具の接触によって付着したものと同様の“黒い条痕”がみられる(菊池強一氏,p.160).
石器の産状の十分な観察をおこったたために捏造を許してしまった.その責任からは逃れられない(鎌田俊昭氏,p.166).
藤村氏が宮城県などで20年以上にわたって発掘にかかわってきた遺跡や石器が,すべて黒かグレーになってしまった.検証発掘が必要だ(渋谷孝雄氏,p.118).
日本考古学協会は,混乱する前期・中期旧石器問題の検証と学問的整理のための特別委員会の準備会をたちあげた(矢島國雄氏,p.115).
■超低周波の磁界の発がん性は――電磁波の健康リスク
疫学調査では,交流電流の磁界による小児白血病のリスクが無視できない.メラトニンによる乳がん細胞の増殖抑制作用が,磁界暴露条件下で阻害される“磁界感受性”機構の解明は,電磁波による健康リスクを明らかにする重要な鍵になろう.(その1,兜真徳氏・石堂正美氏,p.150)
■神経回路モデル“モザイク”でなぜ学習が進むのか
並列にならんだ多数の順逆対のなかで,よい感覚フィードバックを予測した順逆対だけで学習が進み,さまざまな運動の側面に対応して切り替えが可能になる.モザイクを拡張・階層化していくことで,ヒトの知性に迫ることが可能だ.(川人光男氏・銅谷賢治氏・春野雅彦氏,p.197)
■盛り上がった日米科学対決
日米の45歳以下の第一線の研究者が異分野間交流をするJAFoSでは,第3回目にいたって,日本の“ドリームチーム”が初めて“勝利”をおさめることができた.入念なリハーサルと討論での積極的な姿勢とがもたらした成功であった.(磯崎行雄氏・高橋淑子氏ほか,p.191)