97年10月号 今月の‘科学’から

いまなぜ,なにをめざして保全を進めるのか
 保全成功の鍵は,悠久の時間の流れにはぐくまれた生物多様性に,われわれが歴史的価値をみいだせるかどうかである(平川浩文氏・樋口広芳氏,p. 725).
 急速に進んでいる生物多様性の減少をくいとめるために,科学的データの整備が急務である.(前田琢氏,p. 732).


■野生生物の現状を把握して減少要因を解明する
 野生生物集団が縮小し絶滅にいたるときにおこる,左右対称性のゆらぎや病気抵抗性の低下を調べ,集団の生存力の評価が可能になる(椿宜高氏,p. 740).
 衛星画像や航空写真をもちいた広域環境モニタリングの手法が,画期的な進歩を遂げている(恒川篤史氏,p. 765).
 地域のスケールでレッドデータを把握する必要がある.神奈川県でも都市化やレジャーの影響がいちじるしい(高桑正敏氏,p. 710).


保全と回復のためになにができるのか
 ヨーロッパでは生物空間を結びつけることで生態的ネットワークを確保し,地域の多様性を保全する試みが始まっている(一ノ瀬友博氏・Stefan HOTES氏,p. 772).
 自然と人間の調和によって保たれてきた里山の自然と文化がいま失われかけている.それをを守るために,生態学の知見を生かした市民活動が有効だ(鷲谷いづみ氏,p. 779).
 ゴミの埋立で消え去ろうとした伊勢湾の小さな干潟の豊かさが,われわれに大量消費文化の貧しさを教えてくれる(辻淳夫氏,p. 750).


保全を進めるための政策
 生物多様性条約の締結は,国際的なNGOの活動なくしては実現しなかっただろう.日本でも,盛んになっている草の根NGOの活動を政策に反映させるしくみを創らねばならない(黒坂三和子氏,p. 790).
 人間活動を,生物多様性を損なわないようなものにするために,生物多様性条約や種の保存法などをどういかしていくか(磯崎博司氏,p. 799).
 あいまいな面が多いわが国の“生物多様性国家戦略”だが,その理念を発展させていくことは可能である(幸丸政明氏,p. 805).


原発震災はおこりうる
 活断層や歴史地震を検討しただけでは,原発震災は回避できない.活断層のない場所でおこる大地震や津波の影響の対策などが,不十分である.段階的な脱原発が必須だ.(シリーズ第14回,石橋克彦氏,p. 720)


タイ南部に日本軍が残してきたヒ素中毒
 真珠湾攻撃と同時に日本軍は,スズ鉱山を接収するためタイに進駐した.その鉱山あとからの大規模な環境汚染によって,皮膚ガンをもたらすヒ素中毒が住民にまん延している.(飯山賢治・齋藤京子氏,p. 716)

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