科学

2006年12月号
(Vol.76 No.12)

目次

これまで皮膚科学は,もっぱら皮膚疾患の治療,そして美容,すなわち外見を整えることを目的に進められてきた.これは,つい最近まで皮膚が身体を覆う包装紙,あるいはせいぜい体液の漏出や,有害物質の進入を防ぐバリアとしてしか認識されていなかったためである.しかし,この数年,皮膚が多様な役割を担っていることを示唆する研究が相次いで報告された.それらの知見は,これまでメカニズムが十分に明らかにされていなかった東洋医学の研究,あるいは感性工学の分野に,新しい展望をひらくものである.さらに,これからの皮膚の科学は,還元論的なアプローチが主流を成す今日の生命科学に,異なる視点をもたらす可能性まで認められる.(傳田光洋)



 

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特集=皮膚科学というフロンティア
   ──最大の臓器が秘めた可能性

皮膚を科学する 傳田光洋
皮膚はどこまでわかったか 田上八朗
鍼灸医学からみた皮膚 矢野忠
サンケアの進化学 長沼雅子
皮膚感覚のメカニズムに迫る―その工学的アプローチ 仲谷正史
[コラム]
  痒みに関わる分子に迫る―痒みとTRPチャネルは関連があるか? 富永真琴
  非線形科学と皮膚 中田聡
  皮膚と対話する診療―アトピー治療から 野村有子

〈再考●数学へのまなざし〉
忘れられた科学:数学と数理科学をめぐって 甘利俊一
日本における数学について 森田康夫
報告書「忘れられた科学―数学」の真実 伊藤裕子

〈総説・報告〉
最近の地震から見た原子力発電所の耐震設計における地震動評価について 壇一男
米国連邦政府の研究開発投資の最新動向―緊縮財政下,Bush政権の優先テーマとそれ以外で明暗が分かれる 清貞智会

巻頭エッセイ 学ぶ・創る・遊ぶ
  使われなくなった言葉 上野健爾

科学通信
科学ニュース:分化した体細胞から人工万能幹細胞を作製―iPS細胞の可能性と課題  山中伸弥・高橋和利
科学ニュース:フィリピン・マヨン火山の噴火活動を捉える  木下紀正
科学の動向:女性科学者元年?!―東北大学の取り組み  小谷元子

ちびっこチンパンジー(第60回) 他者を通して学ぶ 赤木和重・林美里
霊長類研究所に住むチンパンジー家系図〈連載5周年記念〉

地球・環境・人間(第18回) 貧しい国から看護師を奪うのか 石 弘之

カワンセラー三十六河川を行く(番外編) 九頭竜川・沖縄西表島仲間川・知床遠音別川 山中康裕

星砂Times(第10回) 究極のプレゼント 中嶋康裕

〈認知科学な〉日常(第17回) 切り離される心 田中茂樹

137億光年を奏でる素粒子の詩(第3回) アトラス実験(2) 横山広美

大宇宙からのフォト・レター(第5回) 相互作用をする銀河 野本陽代

日本自然再生紀行(第4回) 豊岡市―コウノトリと共に生きる地域 鷲谷いづみ

Focus in the Dark(第2回) 蚊取り線香の煙 伊知地国夫

文化としての科学の本(第13回) 斎藤靖二/科学と文化を結ぶ会

科学の社会化シンドローム(第5回) 科学をめぐる競争性と不確実性―科学の知財化とフロンティア 石黒武彦

心にのこる1冊
大塚弥之助著『日本の地質構造』 杉村新

書評
ニック・レーン著『生と死の自然史―進化を統べる酸素』 桜井弘 評

50年前には/75年前には

編集部に届いた本から

次号予告/編集後記

 

 

 

 



 

 

 

 

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