本誌10月号掲載の石橋克彦氏の記事(シリーズ“大震災以後”第14回,原発震災―破滅を避けるために,科学,67,720(1997))などに関する公開質問状が,市民グループの手で静岡県知事に提出された.
大規模地震対策特別措置法によって対策が準備されている,マグニチュード8級の東海地震の予想震源域の真ん中に,静岡県は中部電力浜岡原子力発電所(沸騰水型軽水炉4基,電気出力361.7万kW)を抱えている.93年には5号機(改良型沸騰水型炉,電気出力138万kW)の増設計画が出され,受け入れようとする町長・町議会にたいして住民の反対が一時高まったが,今年(1997年)3月25日に石川静岡県知事が増設同意の意見書を政府に提出した.これを受けて3月27日の電源開発調整審議会は,2005年営業運転開始の計画を了承した.しかし,原発の耐震性について,研究や開かれた議論が十分おこなわれ安全が確認されているわけではない.上記石橋論文でも“原発震災”の可能性を指摘し,廃炉をめざすべきと主張している.
静岡県内の各地では,地震による原発事故を心配する市民グループがそれぞれの活動を続けていたが,切迫する東海地震に備えてグループ間の連携を図ろうと,9月7日に“浜岡原発を考える静岡ネットワーク”(Tel/Fax:054-253-1924)が発足した.そして,9月29日には,同ネットワークの最初の活動として,“浜岡町原発問題を考える会”“浜岡原発とめようネットワーク”と連名で,知事と中部電力に公開質問状を提出した.知事にたいする質問は,チェルノブイリ原発事故の引き金が地震だったというテレビ番組(デンマーク放送協会制作,NHKが8月15日に放映),浜岡原発の耐震性と地震対策,放射能災害発生時の防災対策,などに関して10項目40点以上からなる.上記石橋論文のなかの14カ所について意見を求める項目もここにふくまれる.とくに,政府・中部電力にたいして浜岡原発の廃炉を提言することを知事に求めている.また中部電力には,2号機のシュラウド補修,96年の3号機の火災事故,5号機の安全性,使用済み核燃料プールの貯蔵状況など7項目について,原発の安全性を質している.
いっぽう県当局は,原発の安全性確保のために専門家から指導・助言してもらう“原子力対策アドバイザー”制度の導入を進めていたが,原子核物理学,原子力工学,放射線安全・遮蔽,建築耐震構造,地震学の5人の専門家を委嘱して10月中旬にも発足させる.
阪神・淡路大震災や高速増殖原型炉“もんじゅ”事故は,科学技術の信頼性に大きな疑問を投げかけた.県民の安全を守るべき行政が,住民の切実な不安にどのように誠意をもって回答するのか,また,アドバイザーが県当局から助言を求められたときに,科学者としての社会的責任をどのようにまっとうするのか,そして中部電力が企業としての責任をどう示すのか,成りゆきが注目される.
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