科学的アセスメントとはなにか
  
―春の生態学会自由集会での討論

 “人間と自然との共生”を基調理念に2005年の国際博覧会が愛知県に誘致されることになった.閣議了解によって,開催にあたっては環境問題に配慮することが決定され,環境影響評価法の趣旨を先取りした環境影響評価(アセスメント)をおこなうことが表明されている.会場予定地の愛知県瀬戸市の通称“海上(かいしょ)の森”は,学者や自然保護団体から貴重な二次的自然(里山)がある場所とされ,この二次的自然の価値を客観的に評価し,保護・保全することが愛知万博環境影響評価の主眼点になるとみられている(本誌6月号広木詔三氏の“科学の目”,鷲谷いづみ氏のフォーラムおよび8月号小特集:万博は環境と共生できるか参照).

 通産省の“2005年の国際博覧会に係る環境影響評価手法検討委員会報告書”が公表された直後の去る1998年3月26日に,京都大学で開催された第45回日本生態学会大会での自由集会では,この環境影響評価手法の説明および問題点について科学的に議論することが目標とされた.当日は生態学会会員以外の参加者も含めて約100名以上の参加者があり,この問題に対する関心の高さがうかがえた.

 山本進一氏(名古屋大学)を座長に話題提供者は3名で,“日本自然保護協会海上の森・万博問題小委員会”委員の広木詔三氏(名古屋大学)から“海上の森の自然について”のタイトルで海上の森の紹介と過去の経緯の報告がおこなわれ,これに対して菊池多賀夫氏(岐阜大学)から“微地形と東海丘陵要素との関係”のタイトルでコメントがあった.保全生態学の立場から鷲谷いづみ氏(筑波大学)は“二次的自然である里山の自然をどう評価するか”を報告し,石井実氏(大阪府立大学)が里山の保全についてコメントした.最後に,“環境影響評価手法検討委員会”委員の松田裕之氏(東京大学)が“絶滅危惧種に対する定量的な影響評価方法”というタイトルで環境影響評価手法の説明を交えた報告をおこない,これに対して同じ委員の阿部學氏(新潟大学)と芹沢俊介氏(愛知教育大学)から補足的なコメントがあった.その後“万博と今後のアセスメントのあり方について”を焦点に活発な総合討論がなされたが,時間的制限もあり十分とはいいがたかった.

 今回の万博でのアセスメントが今後の日本のアセスメント全体に与える影響はきわめて大きい.その意味からも“科学的なアセスメントとはなにか”と“二次的な自然(里山)の価値をいかに評価するか”を課題としたこの自由集会によって問題の所在が明らかになり,生態学者を中心にした学者が真剣にこの問題に対処しようとしていること,保全生態学が今後重要な役割を担うであろうことが明確になった点で意義があった.

*無断転載を禁じます(岩波書店‘科学’編集部:kagaku@iwanami.co.jp).

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